ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

ライフスタイル行動と幸福

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幸福は人類の不朽の命題です。どんな生活をすると少しでも幸せを実感できるのか。我々は日々の仕事や社会・家庭生活を通して、その答えを探し求めているのではないでしょうか。

幸せに通ずる道は、色々あると思われますが、その中で健康的な食事と運動習慣が人を幸せにするという論文をご紹介いたします。

 

研究
オープンアクセス
公開: 2021年4月1日
ライフスタイル行動の変化と中年日本人の最適な幸福との関連
高尾敏弘、澄直樹、山中義之、藤本宗八&鎌田知有
BioPsychoSocialMedicine

メソッド
研究の対象は、2017年に川崎医科大学附属病院で健診を受診した人から、結果に影響を及ぼし得る因子(脳・心血管疾患、慢性腎臓病の既往、高血圧・糖尿病・脂質異常症の薬物療法)が該当する人を除外した2,295人(平均年齢49.3±8.4歳、女性が54.3%)。
幸福感は世界保健機関による指標(WHO-5)で評価しました。これは主観的な幸福感を25点満点でスコア化するもの。本研究では第3四分位数である16点以上を「幸福感が高い」と判定しました。

 

参考

WHO-5 精神的健康状態表
(1998 年版)
以下の 5つの各項目について、最近 2週間のあなたの状態に最も近いものに印をつけてください。
数値が高いほど精神的健康状態が高いことを示していますのでご注意ください。

 

こころの健康チェック表

最近2週間のあなたの状態に近いものに印をつけてください。
最近2週間、私は… いつも(5)  ほとんどいつも(4) 半分以上の期間を(3) 半分以下の期間を(2) ほんのたまに(1) まったくない(0)
1 明るく、楽しい気分で過ごした。 5 4 3 2 1 0
2 落ち着いた、リラックスした気分で過ごした。 5 4 3 2 1 0
3 意欲的で、活動的に過ごした。 5 4 3 2 1 0
4 ぐっすりと休め、気持ちよく目覚めた。 5 4 3 2 1 0
5 日常生活の中に、興味のあることがたくさんあった。 5 4 3 2 1 0
『WHO-5精神的健康状態表(1998年版)より一部改正』

採点方法:
粗点は、5 つの回答の数字を合計して計算する。粗点の範囲は 0~25 点で、0 点は QOL が最も不良であることを示しており、25 点は QOL が最も良好であることを示しています。

 

結果

食事・運動習慣と幸福感との間に、次のような有意な関連が認められました。

食習慣については、昼食の時間が20分超の人の、塩辛い物を好む人に比較し好まない人、夕食を就寝2時間前以降に取る人に比べてそれ以前に取る人、夕食後の間食が週3回以上の人に比べて3回未満の人が、「幸福感が高い」に該当する割合が高く、食事を食べる速さや朝食欠食、野菜の摂取頻度は有意な関連はありませんでした。

 運動習慣については、30分以上の集中的な運動を週に2回以上する人はしない人に比べて、1日の歩行時間が1時間以上の人は1時間未満の人に比べて、「幸福感が高い」に該当する割合が高いという結果でした。

喫煙や飲酒習慣は、「幸福感が高い」に該当する割合との間に有意な関連はありませんでした。

 

本研究は、日本のプライマリケア集団において、WHO-5スコアを使用してライフスタイルと幸福との関連を調査したものです。食事や身体活動などのライフスタイル行動と中年の日本人の最適な幸福との関連に焦点を当てています。さらに、食事と身体活動の行動の変化が最適な幸福に及ぼす影響を調べています。

 

体の健康と心の健康が密接であり、両方得られて高い幸福感が得られるということでしょうか。

結果がそのまま当てはまるとは思いませんが、面白い研究だったと思います。

ブログを書き続けて座ったままでいるとどうやら幸福にはなれないようです。(笑)

 

 

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