賛否両論ある中、確実にオリンピックは、開催されようとしています。
オリンピックで来日される選手や関係者で問題になるのは、C O V I D -19感染ですが、我々日本国民の健康上の問題だけでなく、選手自身にも様々な健康上の問題が発生する可能性があります。
その一つに急性心筋炎があります。
ワクチン接種後にも起こしますが、今回の記事は様々な原因による心筋炎のお話です。
心筋炎は、競技アスリートの突然死の主な原因です。心筋炎はSARS-CoV-2で発生することが知られています。
JAMAカルディオール
2021年5月27日; e212065。 DOI:10.1001 /jamacardio.2021.2065。
最近のSARS-CoV-2感染を伴う競争力のある運動選手における臨床的および無症候性心筋炎の有病率:ビッグテンCOVID-19心臓登録からの結果
Curt J Daniels 1、 Saurabh Rajpal 1、 Joel T Greenshields 2、et al
ビッグテンCOVID-19心臓レジストリ調査員
設計、設定、および参加者
ビッグテンCOVID-19心臓レジストリの主任研究者は、2020年3月1日から2020年12月15日までのCOVID-19の米国のアスリートに関する集計観察データについて調査されました。13の大学を代表して、1597人のアスリート(964人の男性[60.4%])で心血管検査が実施されました。
結論
COVID-19感染後のCMR(心臓MRI検査)スクリーニングを受けた、1597人の米国の競技アスリートを対象としたこのコホート研究では、37人のアスリート(2.3%)が、臨床的および無症状の心筋炎と診断されました。
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2009_izumi_d.pdf
急性心筋炎の分類と診断・治療
症状
多くの患者はかぜ様症状(悪寒,発熱,頭痛,筋肉痛,全身倦怠感)や食思不振,悪心,嘔吐,下痢などの消化器症状が先行する.その後,数時間から数日の経過で心症状が出現する.心症状には,①心不全徴候,②心膜刺激による胸痛,③心ブロックや不整脈,に随伴する症状がある.有熱患者を診る際に,心筋炎の可能性を念頭に
置けるかが重要である.
血液生化学検査
CRPの上昇やAST,LDH,CK-MB,心筋トロポニンなどの血中増加が一過性に確認される.なかでも,全血を用いた心筋トロポニンTの酵素抗体法による迅速測定が簡便で有用である.
心電図
頻度としてはST-T異常と心伝導障害が多い.QRS波の幅が徐々に拡大してきたら悪化の兆しである.致死的不整脈が出現するので,心電図モニターが必須である.
心臓MRI(CMR)
シネモードに加えてT1早期の強調画像やガドリニウム遅延造影において信号強度の増強像が認められ,さらにT2強調画像など炎症部位に一致した所見が特徴とされる。
治療
基本病状や経過はわかりやすい.すなわち,炎症期が1~2週間持続した後に回復期に入る.心筋炎では,心筋壊死とともに炎症による機能障害が起こり,心ポンプ失調が起こる.したがって,心筋炎での治療介入のポイントは,①原因,②血行動態,③機能抑制,の3つに集約される。
などと、
「急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」
に載っています。
つまり、急性心筋炎とは、心臓の筋肉に炎症が起こり、心臓の動きが悪くなって心不全を起こしたり、危険な不整脈を起こす病気です。重症度は様々で軽症例では自分では気付かないうちに発症し、自然に治ってしまうこともありますし、劇症型心筋炎と呼ばれる重症例ではショック状態から心停止に至ることも珍しくありません。年齢に関係なく子供から大人まで発症する可能性がありますので注意が必要です。
今回のオリンピックには選手として1万人から1万5千人が集まるといわれています。
今回の論文では、1597人の米国の競技アスリートのうち37人(2.3%)が、心筋炎を起こしたとされています。
とすると今回のオリンピックでも、340人以上のアスリートが心筋炎を起こす可能性があり、 中には残念ながら突然死を起こすアスリートも出てくると思います。
開催に関して賛否両論ありますが、参加するアスリートには罪はありません。
日本国内で不幸にも病気になったときは、日本の医療者が適切に診断治療を実施しなければいけません。
実際にオリンピックの競技が始まったら、我々は日本人として、海外のアスリートの健康に全責任を持つ必要があります。
C O V I D -19の感染も含めて、海外のアスリートには、元気に帰国していただきたいと思います。