ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

サイトカインストーム

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前回に続き今回も免疫、特に C O V I D -19における免疫異常に関して勉強していきたいと思います。 今回のテーマは、サイトカイン。

サイトカイン(Cytokine)とは、低分子量で分泌型のたんぱく質であり、細胞間シグナル伝達物質の総称です。 産生細胞と標的細胞との間で作用し、細胞の機能を変化させます。

サイトカインのうち、白血球を遊走させる働きをもつものをケモカイン( Chemokine)と呼びます。 サイトカインとサイトカイン受容体の結合は特異的であり、インターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)、腫瘍壊死因子(TNF)など免疫・炎症の場で働く重要なサイトカインがあります。

サイトカインが作用する場面やその機能は多岐にわたり免疫系では、免疫細胞の活性化、増殖の分化・終息に関与します。

獲得免疫において、ヘルパーT 細胞はサイトカインの影響により特定の細胞集団に分化し、さらに特定のサイトカインを産生して細胞性免疫を誘導したり、抗体産生を介した液性免疫を誘導したり、あるいは炎症を増幅したりします。

一方でサイトカインに誘導された制御性T細胞はサイトカインを産生し、免疫を抑制します。 このようにサイトカインは、免疫のあらゆる場面に関与しています。

新型コロナウイルス感染症においては、どんな免疫異常が出現するのでしょうか。日本医師会 C O V I D -19 有識者会議に国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 理事長前 大阪大学 総長の平野 俊夫先生が寄稿されています。

www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp

サイトカインストームとは、一般に感染症や薬剤投与などの原因により,血中サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF-αなど)の異常上昇が起こり,その作用が全身に及ぶ結果,好中球の活性化,血液凝固機構活性化,血管拡張などを介して,ショック・播種性血管内凝固症候群(DIC)・多臓器不全にまで進行する.この状態をサイトカインストーム(cytokine storm)と言います。

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平野氏らの研究によれば、コロナ感染後の肺炎からARDS(急性呼吸窮迫症候群)となった患者の血液ではサイトカインの一種であるインターロイキン6(IL6)の濃度が上昇していて、IL6は免疫反応など生体の恒常性維持に必要なサイトカインですが、炎症性を有することから、サイトカインストームの中心的な役割を果たすとされています。IL6を大量に分泌するための増幅回路(IL6アンプ)がありますが、新型コロナウイルスが増殖する気管支や肺胞上皮にもIL6アンプが存在していて、気管支や肺胞上皮に侵入した新型コロナウイルスがIL6アンプのスイッチをオンにしてしまい、サイトカインストームが起きてしまうということがわかってきました。

この I L -6 阻害薬にトシリズマブ(tocilizumab, TCZ)があります。トシリズマブは、IL-6 受容体に対するヒト化モノクローナル抗体であり、膜結合型及び可溶性受容体の双方に結合することにより、IL-6による活性化を阻害します。本邦で開発・製造(中外製薬工業)され世界で最初に承認されたIL-6 阻害薬です。2008年に承認され、現在では広く世界で承認、使用されています。商品名:アクテムラ、関節リウマチでよく使われており通常4週間おきに点滴静注し、薬価は一回分92289円です。 この薬はお分かりの通り、コロナ感染症のサイトカインストームの有力な治療薬となることが期待されています。

日本にはたくさんのいい薬があります。政府、厚労省、学会がリーダーシップをとって早くデータを取り、臨床に生かすべきと考えます。そしてそのデータは、すべて国民に開示すべきであると思います。

いつも最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

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