ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

私と介護保険

我々ほぼ全員が直面することです

介護サービスの必要性

ケアマネージャー

要介護認定を勧める

介護保険導入後20年、導入前後で変わったこと

今後の課題

 

研究職や管理職で一線から遠ざかっていた医師と違い、叩き上げの臨床医として介護保険とかかわってきた者として少しお話したいと思います。

 

我々全員が直面することです

 

日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳、健康寿命は男性72歳、女性74歳。ということは、各々9年、13年の介護を要する期間が誰にでも発生してくるということです。

この期間を居宅で過ごすのか、施設で過ごすのか、人によって考えは様々かもしれません。

 

介護サービスの必要性

 

 在宅医療の従事や介護施設での勤務の経験はあまりないので、直接的な介護保険とのかかわりは少ないですが、外来の患者さんが年齢とともに介護の必要性が高まっていくにつれ、介護保険がその顔を見せるようになっていくのを実感します。

 実際70~80歳位の患者さんで、変形性膝関節症や腰部脊柱管狭窄症などを患い外来に通って内服薬、注射、リハビリ治療などをつつ”けておられる方の中に、徐々に身体のフレイル化(私のブログ参照)に伴い、歩行機能や日常生活上の行動範囲(ADLといいます)が低下していって、通院が次第にむつかしくなっていかれる方が出てきます。実は、残念ながら我々が治療させて頂いていても、こういう例は少なくなく、途中からデイサービスなどの通所介護サービスなどの導入がどうしても必要になってきてしまいます。

つまり、家庭内に引きこもらず、定期的に施設に通所すること自体がリハビリ(生活リハビリ)であるという考えにもとつ”いています。

 

ケアマネージャー

 

私の記憶では正式に介護保険が始動したのは、2000年4月だったと思いますが、この時の行政よりのアナウンスとしては、

1)家庭内での大変な介護の苦労をなくして入所、通所などの介護サービスで家族介護の肩代わりをします。

2)民間の介護サービス事業を大規模に創生し一大産業を興します。

だったと思います。

利用者(患者)さんの介護プランを立てるのがケアマネージャーですが、この介護保険開始が原因で、私が当時勤務していた病院から業務命令の形で、ケアマネージャーの資格取得を指示されました。

当時私は、地方の基幹病院である総合病院に勤務しており、忙しい診療の合間をぬって受験勉強するはめになりました。

まともに勉強などできずに試験に臨みましたが、運よく合格。

同僚の先生の中には何人も不合格になる方々がいて、肩身の狭い思いをされていたことが、つい昨日のことのように思い出されます。

実際の仕事上でケアマネージャーの資格を使ったことは一度もありませんが、この時の知識は、大いに役立っていると思います。

 

要介護認定を勧める

 

実際の外来でフレイルから要介護状態になっていくと思われる患者さんには、こちらからご本人やご家族に要介護認定の申請を、早めにおすすめします。そうしておおよその今後の流れをご説明します。

行政側も積極的に医療保険でのリハビリから介護保険を使ってのリハビリへ転換するよう診療報酬上も強く誘導しています。

例えば、要介護認定を受けている患者さんが医療保険での外来リハを利用すると5か月間以降は診療報酬上の点数が半分近くに減らされます。

又、この際3か月に一度管理料を算定する際、面倒な書類作成やカルテ記入を課せられます。

 

介護保険導入後20年、導入前後で変わったこと

 

高齢化の進展に伴い、要介護高齢者の増加、介護期間の長期化などで介護ニーズは増大。

核家族化の進行、介護する家族の高齢化など、多くの理由で介護保険制度が導入されたものと理解していますが、その後はどうなっているのでしょう。

例えば多くの疾患を抱え、医療の介入が必要な要介護度の高い患者さんは、現在介護の選択肢がかなり少ない状況ではないでしょうか。

専ら入所の選択肢となる、特別養護老人ホームなどはいつも満員状態であるし、サービス付き高齢者住宅は、費用や入居後のトラブルなど考えられるし、介護療養型病床群は廃止予定で、介護医療院は数が少ない。老健は基本的に中間施設であります。それに地方に住んでいるとよけいに選択枝が少なくなります。

 

じつは今現在、私の外来にこういう患者さんの奥さんが通院中であり、この方も要介護状態であります。

いつもsilver carで通ってこられ、この奥さんも既にかなり前から介護サービスを受けるべき国民の一人であります。

地方は、多世代同居が多いのですが、このような老老介護も珍しくはありません。

果たしてこれで40歳から介護保険料を払って利用時には1割~3割の自己負担料を払って不本意な介護サービスを利用しつつ”ける意味があるのでしょうか?

行政側は別として、国民一人一人から見たら20年たって本当に介護保険を導入してよかったと思えるでしょうか。

 

今後の課題

 

高齢者人口の増加や家族構成、家族関係の変化に伴い地域(特に地方)において、施設在宅での要介護者への支援がより不足してきているように思われます。

「自立支援」や「介護予防」とうたっても、在宅で支えきれずに「老老介護」「認認介護」「孤独死」の問題が出てくるものと思われます。

 

行政は、地域包括ケアシステムの拡充を目指しているようですが、人口減少とその逆の高齢化率の上昇を認める地方の地域で果たして、地域包括ケアシステムがちゃんと機能するでしょうか。

医療行政に関しては素人の私ですが、外来に通ってこられる患者さんに毎日接してみて、現状の介護保険は矛盾が多いように見えます。

 

若い時必死に働いて、当時の日本を支えてこられた高齢者をお金がかかるだけの厄介者としてみたり、逆に若ければどんな人間にも言いたいことも言わずチヤホヤするような風潮は、全く許せません。

高齢者に優しい社会であってこそ、すべての人にとって住みやすいと感じる社会になると強く信じています。

 

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