ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

痛み

 Total painって?

 整形外科での痛みの分類

 痛みの原因は?

 痛みを和らげる体の仕組み

 多様な”痛み”

 

我々人間が、最も避けたいもの、嫌いなものの中の一つでしょう。

私は整形外科医ですので、仕事上も一番患者さんのご相談を受ける症状であります。今回は、様々な”痛み”の概念がある中、整形外科と”痛み”について一緒に勉強してみたいと思います。

 

Total painって?

 

痛みの概念を理解する上ですごく役立つと思われる total pain

という 言葉があります。

これは、がんなどの緩和医療から出てきた言葉ですが、

1)身体的な痛み

2)精神的な痛み

3)社会的な痛み

4)Spiritual pain

によって構成されます。

1)は、まさに整形外科に来られる理由となる症状ですが、外来に来られる患者さんの訴えの順番は多い順に男性 ①腰痛 ②肩こり  女性 ①肩こり ②腰痛 ③手足の関節痛 です。

2)は、不安、いらだち、孤独感、恐れなどからくるものを指します。

3)は、仕事上の問題、経済上の問題、家庭内の問題、人間関係からくるもの。

4)は、宗教的、哲学的な悩みからくるもの。

  

つまり、痛みとは、人間の感覚(痛覚)以外に精神的な強いストレス、社会的な様々な問題、宗教的哲学的苦悩など様々な原因で自覚する不快な感覚的かつ情動的体験ということになります。

つまり、人間の体に起こるすべてには、感覚と情動(精神)が関係しており、これらが原因となって”痛み”が生まれるということだと思います。

 

整形外科での痛みの分類

 

整形外科では痛みを3つの種類に分けます。

 

1)侵害受容性疼痛

切り傷、骨折などの外傷や関節リウマチ、変形性関節症などの炎症が原因で末梢神経が痛みを感知します。

2)神経障害性疼痛

坐骨神経痛などのように神経自体が障害されて起こります。

3)心因性疼痛

持続する疼痛で脳などが感作されて生じます。

 

これらが混じりあった症状を訴えて患者さんは外来に来られます。

 

 痛みの原因は?

 

実際の外来での治療において、患者さんが初めて来られて、どこそこに痛みがあると言われた時、それが整形外科的な痛みなのか内臓などの痛みなのか判断するのに大切な事は、それが自発痛なのか運動痛(体動時痛)なのかという事です。

例えば、胸痛です。もし体を動かすときや深呼吸時に主に痛むのであれば、肋骨や筋肉など胸郭の症状ですが、もしそうではなく安静時に主に痛むのであれば、心臓や肺など内臓の症状と考えるべきであります。

 

それから、強い背部痛や腰部痛は大動脈瘤も考えるべきであり、じっとしていられないような、腰部、側腹部痛は尿路結石も考えるべきであります。

動脈瘤心筋梗塞は決して見落としてはいけません。(red flag といいます)

 

痛みを和らげる体の仕組み

 

痛みに関しては、人間の体にもともと和らげる仕組みが備わっています。(下行性疼痛抑制系)。

実際には、うつ病に使っていた薬にこの抑制系を賦活する作用があり、これらの薬を第一選択にすることもあります。

この下行性疼痛抑制系以外にも、自らの痛みを抑制する仕組みが人間の体には備わっています。

 

多様な”痛み”

 

英語では、pain , hurt , ache , sore , いろいろな言葉があります。

日本語でも、痛み、疼痛、苦痛、傷み、悲哀、いろいろな表現がありますように、”痛み”と一言で言っても様々な意味があります。

整形外科の外来に来られる患者さんは、体の一定の部位の痛みを訴えてこられますが、その背景には total pain の項で述べさせていただいたように様々な原因が合わさった症状であるということを、我々はいつも忘れないでいたいと思います。

 

「病気を見ないで、人を診ろ」と昔から言われますが、すべての症状には、感覚と情動(精神)が関係しているということを決して忘れないように、今後も患者さんを拝見していくつもりです。

 

 

 

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