ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

整形外科に行って 薬 がでました

f:id:hiro_chinn:20201104194349p:plain

ブログを書くとき私の主な希望は、 医療機関と皆さん(患者さん)との間のを取り除くことです。 恐らく皆さんの体に何か起こった時は、救急車で病院に搬送されるか、或いは多くの方は NET 検索や口コミでお近くの病医院にかかられることと思います。

この時一般的にはどういう流れで診療を受けるか、受けた診療に妥当性はあるのか。

それがある程度ご自身でわかれば、そこのお医者さんへの信頼にもつながることと思い、今までブログを書いてきました。

あくまでも私個人の考えで書いておりますが、今まで様々な病院で仕事をさせて頂いておりますので、恐らく幅広い知識を持ち、標準的な判断が可能な人間であると勝手に思っております。

f:id:hiro_chinn:20210111205406p:plain

今回は、整形外科の治療上重要なについてお聞きいただきたいと思います。

整形外科に来られる時の症状は、圧倒的に「痛み」と「しびれ」であると思います。 ( 拙稿「痛み」をご参照ください。)

痛みに対しては鎮痛薬が使われますが、種類としては

アセトアミノフェン( A A P )

非ステ ロイド抗炎症薬( N S A I D :Non Steroidal Anti Inflammatory Drugs )

オピオイド(非麻薬性/麻薬性)

神経障害性疼痛緩和薬

その他の鎮痛薬

① アセトアミノフェンは最近整形外科領域で比較的安全性の高いとしてよく使われるようになってきており 4g/日 を上限として承認されています。

一般的に は腎排泄と肝排泄大きく分けられこの A A P は肝排泄であり、肝障害に際して薬物の血中濃度が高くなる可能性があり注意が必要になります。

ですから肝疾患のある患者さんでは 1.5 g/日 以下の用量に抑え、高齢者も 1.5g 以下とした方が良いと考えます。

アルコール摂取でも肝障害のリスクは高まります。

以上よりお分かりのように を処方しようとする時、特に高齢者の場合には、その方の肝機能や腎機能異常、一般的な採血で現れるような異常がないことを確認しておくことが、非常に重要であると思います。

② 実際にはこれが一番よく使われる になると思います。この中でも ロキソプロフェンNa が、胃薬とともに一番使われるかと思います。 鎮痛効果が比較的強い反面プロドラッグ( 内服後肝臓で代謝され、初めて効果を表す )のせいか消化器への副作用が少ない印象があります。

 副作用として、一般的に

1)胃腸障害は3~15%に発症し、胃粘膜における C O X ーⅠ阻害によります。胃潰瘍(穿孔)、出血などが出現します。

2)腎障害:元々腎障害のある患者さんは、 A A P 以外内服しない方がよいです。

3)浮腫:経験的に ロキソプロフェンNa 処方後、顔面まで浮腫が出たケースに遭遇したことが何回かありました。

4)心血管系障害:血小板凝集能の低下や高血圧などにより様々な心疾患を呈します。

5)(アスピリン)喘息:アスピリンに限らずすべての N S A I D で出現します。基本的に喘息がある場合 ,N S A I D は禁忌です。

{シクロオキシゲナーゼ ( C O X ) には C O X -ⅠとC O X -Ⅱの二つのアイソザイムが存在し、C O X -Ⅰは胃粘膜の正常細胞に発現しており、細胞保護効果を持つ P G の産生にかかわっておりの選択性がなく C O X -Ⅰを阻害すると P G の産生が阻害されずブラジキニンなどの発痛物質の疼痛閾値が低下したり、炎症が増強して、疼痛を感じるようになります。}

つまり通常の N S A I D は正常胃粘膜細胞にある C O X ーⅠ を阻害して、粘膜を傷害してしまいますが、 C O X ーⅡ だけであれば、炎症を抑え発痛物質を抑えるため、胃粘膜障害はその分非常に少なくなるということだと思います。

但しこの C O X -Ⅱ阻害薬は鎮痛作用が弱く、頻繁には処方されません。

③ ③と⑤は特に慢性疼痛(主に3か月以上続く中等度以上の疼痛)に対して使われることが多く、我々はトラマドール及びその配合剤の 非麻薬性オピオイドを処方することが時々あります。

弱オピオイドとも言いますが、オピオイド特有の便秘、悪心、睡眠障害とりわけ、悪心が多く、必ず吐き気止めと一緒に処方します。

④ ④は末梢神経が直接障害されて疼痛を出している時などに処方され、プレガバリン(リリカ、タリージェ)は、眠気、ふらつきなどの副作用が時々見られる為、最小用量より漸増していく必要があります。

賛否両論ありますが私はよいだと思いますが、高齢者では転倒などに注意する必要があります。

低用量から増量していけば、まず問題になることはありません。

⑤ その他の鎮痛薬:抗うつ薬のデュロキセチン(サインバルタ)【一般名或いは薬剤名(商品名)】は慢性疼痛などに最近頻用されています。実際使ってみて、効果的なことが多いと思います。

⑥外用薬:整形外科では非常にたくさん処方されますが、気を付ける点が3点あります。  

ⅰ)ケトプロフェンテープ(セクター、モーラス、ミルタックス):光線過敏症など皮膚局所の重症副作用を出す可能性があります。 f:id:hiro_chinn:20201105213406p:plain

ⅱ)エスフルルビプロフェンテープ(ロコアテープ):経皮吸収率が高く、 N S A I D を内服しているのと同様と考えて注意が必要です。それに皮膚炎(かぶれ)を起こし易いです。

ⅲ)湿布からは微量でも薬剤を吸収しますので、アスピリン喘息に注意する必要があり、我々は喘息の既往がある方には、原則的に処方しません。しかし内服不可でありどうしてもの時は、最近喘息の発作を起こしていなければ、湿布のみ処方する場合はあります。

整形外科において、薬物治療は重要な選択肢の一つですので、色々工夫して使用した方が早めに患者さんがお楽になると思います。

以上、整形外科外来における薬物治療において、皆さんがに関して知っておくべきことを、概ね残らずお話させて頂きました。

もし整形外科を受診される予定なら、この記事を含めて過去に書かせて頂いた拙稿を全部お読み頂いてからおかかりください。

f:id:hiro_chinn:20210111205900p:plain

参考文献

1)今日の治療薬2020

2)日本緩和医療学会、がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン: 2010 , https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2010/chapter02/02_04_02_01.php