ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

個別指導2

 

 学習塾ではありません

 指導の種類は

 高点数?

 どうして指導日直前なの?

 指導会場での実際

 自主返還とは?

 個別指導の実施は控えてください

 個別指導後に自殺した医師が多数います

 個別指導の在り方

 

学習塾ではありません  

 

 一般の皆さんは、個別指導と言うと学習塾を思い浮かべるでしょうが、我々医師にとってはかなり特別な意味を持つ言葉であります。

また、医師でも病院勤務の医師はあまり経験することはないでしょう。

保険診療は、「公法上の契約」に基ずく契約診療ですから、医師法、医療法、健康保険法、療養担当規則及び診療報酬点数表等を遵守しなければなりません。そのため、保険制度が円滑に運用されるように行政機関によって行われる行政指導のことを、保険医療機関への「指導」と言います。

 

実際我々が、患者さんを診療して得られる診療報酬は、「レセプト」として、社保、国保などに請求されます。それらの一部には国民の税金が充てられるわけであり公権として個々の医療機関を調べるのは当たり前といえるかもしれません。

 

指導の種類は?

 

我々が経験する指導は主に2つ、 集団指導と個別指導です。

集団指導とは年1回、ホテルの大ホールや講堂に医師会員としての開業医が集まり厚生局と医師会が共同で講習会形式で90分~120分行われます。我々は診療終了時間を繰り上げて、会場に駆けつけます。ここでは保険診療を行う上での法令やカルテの書き方、レセプトの請求方法などが講義されます。

 

高点数?

 

個別指導は全然違うものです。対象となるのは、

1)患者や支払機関より情報提供があった医療機関

2)再指導となったもの

3)高点数の医療機関

です。実際には3)が多いようです。

つまり1件当たりのレセプトの平均点数の1.2倍、上位8%が選ばれます。(と、言われています)

ただ、知り合いの開業医が言っていましたが、

1)院長とは別の診療科目の専門医が外来を持っていたりすると、専門医として検査や院内処方薬が増える。また

2)院内処方であれば、薬の点数の分上積みになる。

3)診断精度の確保のため高額な検査機器を導入していれば、その分高くなる。

など、全く合理性のない基準であります。

 

どうして指導日直前なの?

 

個別指導日は、1か月前に突然厚生局より通知が来て、勝手に期日を指定されます。又、この時は診療録を持参するわけですが、個別指導日の1週間前に20冊、前日に10冊、先方より指定されます。(なぜ直近に通知されるのであろうか。)

 

個別指導は指定された会場に我々が出向いて行われます。酷暑の中、車で2時間かけて県庁所在地に行き、会場近くの駐車場から台車で山ほどある資料の入った段ボールをたくさん、会場まで頑張って運びました。

 

個別指導は、控室の隣のあまり広くない部屋で行われました。構成は一定ではありませんが、我々保険医、事務長、と先方は、指導医療官(医師)2名、事務官2名、立会人(地区、都道府県医師会の担当理事など)1~2名などで行われます。

 

指導会場で実際行われること

 

まず事務官が、健康法第73条、国保法第41条、高齢者医療確保法第66条、などに基ずき実施される個別指導である旨宣言し開始されます。

その次、各参加者が自己紹介し、その後事務官が事務的な事柄を質問した後、いよいよ指導医療官によるレセプトとカルテを突き合わせながらの質問、指摘等の指導が行われます。詳細は専門的になりますので省きますが、指導医療官は専門と思われる分野に関して直接的に辛辣に詰問してきます。

反論があれば、こちらもあまり遠慮せずに反論し、なければ指導内容を神妙に拝聴します。ひとしきり終わったら一旦休憩に入りその後、行政側からその日の講評内容をまとめて、口頭で伝えられ、後日文書を正式に送付されます。

 

自主返還とは?

 

自主返還金を強制される場合もあります。

統計によりますと指導、監査によるものは年間100億円近くに達します。

「診療報酬請求の契約の当事者は保険者と医療機関であり、厚労大臣には当事者性がない。また、診療報酬の審査も保険者の権限であり厚労大臣の関与する事項ではない。」

「 このような法律上の原則があるために、自主返還として診療報酬の返還は、保険医療機関が任意に行う形式がとられている。」

と主張する団体もあります。

つまり、個別指導も自主返還も厚労省に権限はないと主張しているのです。

 

 個別指導の実施は控えて下さい

 

私の知人が話していましたが、COVID-19がまだ蔓延している状況での開催に際して、もし開業医が感染したら確実に休院か閉院に陥るであろうことを考えれば、行政側の危機意識がCOVID-19への感染対策と同様に全く感じられないと憤慨していました。

某保険医協会は実際に厚生局に対し個別指導の本年内の実施はしないよう強く要請しています。

 

個別指導後に自殺した医師が多数います

 

この個別指導の後に自殺した医師が過去に多数存在しますし実際の個別指導時にも指導医療官より人権人格を無視した言葉を投げつけられる場合も多々あります。他方この指導医療官による刑法事案も多数存在するということも忘れてはいけないと思います。

 

個別指導の在り方

 

そもそも、保険診療契約は、我々保険医が患者たる被保険者に療養を給付し、被保険者は保険者(社保、国保など、)に保険料を支払い、保険者は保険医に診療報酬を支払うという三面契約であり、そのために各種法律や規則があり、2年ごとに改定される診療報酬点数表によって細かく定められています。

このような制度が適正かつ円滑に運用されるためには、保険診療及び診療報酬請求のルールが周知徹底されることが必要であり、そのためにこそ指導という制度の存在意義があると思います。

にもかかわらず、指導が監督官庁の示威行為や返還金目的或いは、高点数抑制などの為に実施されるなら、その存在意義は全く失われるものと思われます。

厚生局担当者と我々保険医が相互理解に基ずき、建設的前向きな意見を双方向にかわし、かつ中立公平な第3者の立会いの下、オープンな形で(録画録音も自由に)開催されるよう、少しずつ改善していくべきであると思います。

 

とは言いましても、酷暑の中或いはCOVID-19感染リスクのある中集まられた、立会人の先生方や指導医療官、事務官の方々に対し厚く御礼申し上げます。

 

 

 

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