ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

交通事故の患者さんは辛いよ

全国の事故状況
医療機関から見た流れ

症状固定
損害保険料率算出機構






全国の事故状況

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この自動車社会において、もちろん皆さんは、運転免許をお持ちのことと思いますが、
皆さんがもし交通事故に遭われてケガをされた時(多くの方が経験したことがないと思いますが)その後どうなるのか。
特に医療機関から見た流れに関し概要をお話したいと思います。

全国の交通事故の発生件数、死亡者数、負傷者数ともに減少してきているようです。


医療機関から見た流れ


しかし、運悪く交通事故に遭われた場合、最悪は死亡。
死に至らずとも、重症者は救急車で救命センターか地域の(基幹)病院の救急外来を受診することになります。
以前私も地方の基幹病院の整形外科に勤務しており、夜間の救急外来の当直をやっていた時、「交通外傷が入ります」と看護師より連絡があり、外来に行ってみると、すでにブルーシートに包まれた患者さんが来院。顔を見ると頭の半分が欠損して頭蓋内が露出している状態であったことがありました。このような患者さんから軽い捻挫や打撲の方まで様々な状態で見えます。
もちろんその場で C P R (心肺蘇生)することも珍しくはありません。

比較的軽い場合は、事故時警察に連絡し病院には後日かかるという人も多いです。

残念ながら加害者側になってしまった場合、道路交通法の第72条に定められていますが、運転者は負傷者を救護する義務及び事故について警察官、警察署へ報告する義務があります。

事故後、軽症の方は私が今いるような医院クリニックに来られ、診断治療を受けられるケースが多いと思われます。
整骨院や鍼灸院、マッサージでは少なくとも、最初警察署に提出する診断書や症状固定時の後遺症診断書が書けないので、整形外科受診をおすすめします。

そもそも中等症~軽症の患者さんであえて入院の必要のない患者さんは、病院の医師たちは、あまり積極的には診療しないような印象があります。
近くの大きな公立病院にかかっていたが、よくならないのに「治療は終わり」と言われたといって、泣きながら駆け込んで来られる患者さんも時々おられます。


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上のグラフは軽症の事故患者さんの部位別割合です。
軽症の交通外傷で一番多いのが頸椎捻挫で、捻挫型、神経根型、バレリゥー型などに分けられリハビリテーションが必要となりますが、特にバレリュー型は自律神経の症状を当初強く出し対応が遅れると症状の遷延化につながります。それから自爆事故と違い相手のある事故の場合、常に P T S D やうつ病、パニック障害などの精神症状を伴い、これに対しても症状が重い場合は、精神科の先生に併診をお願いする場合があります。又患者さんの中には、症状が良くなってから復職をと考えている方がいますが、仕事しながら治療するほうが結果的に早くよくなると経験的には思いますので、患者さんにもそう申し上げます。



保険会社によりまちまちですが、大体3~6か月になるとそろそろ「治療終了にしてください。」とか「症状固定にしてください。」とか患者さんに言ってくるようです。この際保険会社の担当者と患者さんとの間でもめるとさらに病状が悪化します。

保険会社が必要以上に早期に症状固定させようとするのは、支払う保険金の金額を抑えるためと思われます。
治療が長引くとその分、治療費や休業損害もかさんでいきますし、入通院慰謝料もどんどん高額になっていき、任意保険の負担額も高額になるので、それを防止するためと考えられます。

保険会社側から見ると” D M K 136"というのがあって、打撲1か月、むち打ち3か月、骨折 6か月だそうです。少し一方的な基準のように思えます。

症状固定

外来で内服薬、外用薬、注射、リハビリ治療など受けても残念ながらよくならない場合、多くは症状固定という形で交通事故の保険は終了になります。
この時、後遺症の内容を医師が記入した後遺障害診断書が経過中に撮った画像( X P , MR I , C T など)とともに保険会社に郵送され
さらに損害保険料率算出機構に回され、ここで後遺症の損害の額が算出されます。全く相当しないことも多いです。

損害保険料率算出機構

損害保険料率算出機構とは、法律に基づいて設立された非営利の民間の法人で損害保険会社を会員とする組織です。経費は会員保険会社の会費で賄っており、自賠責保険に関する業務の運営経費は自賠責保険料の一部で賄っています。
主な仕事としては、自動車保険、火災保険、傷害保険などの参考純率及び自賠責保険、地震保険の基準料率を算出し、会員保険会社に提供したり、自賠責保険への請求に対して、各都道府県庁所在地にある調査事務所を通して、損害調査を行ったりします。


ここまでまとめますと以下のようになります。

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損保料率機構から見るとこうなります。当機構とは損害保険料率算出機構です。

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示談も終わって強い症状がありさらに治療を希望する場合は、健康保険を使って継続することができます。

でも長く続ける方は、なぜかほとんどいません。


参考文献

交通事故対応マニュアル/フローチャートで手順や処理対処法を確認https://xn--3kq2bv77bbkgiviey3dq1g.com/koutsuujiko_taiou/
自動車事故の発生状況/三井住友海上https://www.ms-ins.com/special/rm_car/accident-data/
損保料率機構の役割/https://www.giroj.or.jp/about/overview.html