ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

自殺予防

f:id:hiro_chinn:20220109090821p:plain



f:id:hiro_chinn:20220109080331p:plain

https://www.oecd.org/tokyo/statistics/suicide-rates-japanese-version.htm

 

f:id:hiro_chinn:20220109080651p:plain

 

f:id:hiro_chinn:20220109080812p:plain

https://www.mhlw.go.jp/content/h28h-2-02.pdf (2022年1月9日閲覧)

 

OECD各国及び日本での自殺者死亡率の推移です。

OECDの中で率として日本は4番目。そして日本国内では、男女とも高齢になるほど死亡率は増加しています。

筆者にも救急外来で自殺者が運び込まれ、残念ながら救命できずに亡くなってしまった苦い経験が複数あります。

今回の記事は、大変重いテーマですが、この自殺に関して取り上げさせていただきます。

 

オンラインで公開2021年11月18日 doi:  10.1016 / j.jad.2021.11.048
アジア太平洋地域におけるCOVID-19うつ病とその危険因子–系統的レビューとメタアナリシス
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8599140/

背景:この系統的レビューとメタアナリシスは、アジア太平洋地域の影響を受けた集団におけるうつ病のプールされた有病率とその危険因子に基づいて、COVID-19パンデミックの影響を報告する現存する文献を統合することを目的としています。
方法:2021年1月から2021年3月30日までにPubMed、Google Scholar、Scopusで公開された記事を対象に、PRISMAガイドラインに従って系統的レビューとメタ分析アプローチを採用しました。スクリーニングの結果、82の論文が得られました。

結果:201,953人の回答者の全体的なプールされたうつ病の有病率は、34%(95%CI、29–38、99.7%)です。
発見された主な危険因子は、サブグループに関係なく、COVID-19感染の恐れ(13%)、性別(すなわち、女性; 12%)、および基礎疾患の悪化(8.3%)でした。具体的には、COVID-19感染の恐れは、一般集団(k  = 14)と医療従事者(k  = 8)の間で最も報告された危険因子でした。

結論:パンデミックは、アジア太平洋地域の人々、特に一般の人々、医療従事者、学生の間でうつ病を引き起こしました。この問題に対処するには、関係当局からの即時の注意と介入が必要です。

さしあたって医療従事者で年配の筆者は、高リスクグループということでしょうか。

依然として続くコロナ禍と常に弱者である女性、健康不安増える高齢者が高リスクということです。

 

JAMA Netw Open. 2021 Nov; 4(11): e2136113.
Published online 2021 Nov 23. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2021.36113
米国の成人におけるソーシャルメディアの使用と自己申告によるうつ病の症状との関連
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8611479/

目的
個々のソーシャルメディアプラットフォームの自己申告による使用と成人の抑うつ症状の悪化との関連を特徴づけること。

デザイン、設定、および参加者
この調査研究には、米国の18歳以上の個人を対象に2020年5月から2021年5月までの間にほぼ毎月実施された確率の低いインターネット調査の13の波からのデータが含まれていました。データは2021年7月と8月に分析されました。

結果
ソーシャルメディアの使用の一部の形式(特にSnapchat、Facebook、YouTube)が、その後の調査で自己申告による抑うつ症状のレベルが高いことに関連していることがわかりました。
私たちの結果は、以前に抑うつ症状との関連が観察されたのは若年成人に限定されないことを示唆しています。実際、Facebookの効果量は若い大人の間で大きくなっていますが、TikTokとSnapchatの効果量は35歳以上の人の間で大きくなっています。

 

f:id:hiro_chinn:20220109083410p:plain

非専門医が「うつ病」を診断治療するための5 steps
http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-kameda-170222.pdf


最近特にいわれていますが、SNSの利用もかなり悪影響を及ぼすようです。

挙げればきりがないと思います。各国(日本も含めて)対応策を講じていますが、自殺者の数は大きく減っていません。

何かこれに対する予防策・防止方法はないのでしょうか。

その一つになるのが運動でしょうか?

 

BMC Public Health. 2020; 20: 1255.
Published online 2020 Aug 18. doi: 10.1186/s12889-020-09323-y
うつ病の予防のための運動介入:メタアナリシスの系統的レビュー
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7436997/

メソッド
2018年7月まで、PubMed、Embase、PsycINFO、およびCochraneを使用して体系的な検索が実行されました。

結果
134の研究で8つのメタアナリシスが含まれていました。すべてのメタアナリシスは、うつ病の発症ではなく、うつ病の症状について報告しました。これらのうち5つは中程度の品質、3つは低品質と評価されました。

6つのメタアナリシスは有意な効果を発見し、2つは子供、青年、成人および高齢者の抑うつ症状を軽減する運動介入の有意でない効果を発見しました。
ただし、いくつかの調査結果は、低強度の運動が高強度の運動と同じくらい効果的であったことを示唆しています。

結論
この研究からの証拠は、運動介入が幅広い年齢層の一般集団の抑うつ症状に有益な効果をもたらすことを示唆しています

討論
運動は、うつ病のための貴重な予防戦略であることを証明することがより説得力のある証拠は、一般集団におけるうつ病や抑うつ症状の発症に対する運動介入の効果を調べたのランダム化比較試験(RCT)から来ています。

いくつかのメタアナリシスでは、これらの研究を集め、通常、子供、青年、成人、または高齢者などの特定の年齢層、に焦点を当て、うつ病に対する運動介入の全体的な有効性を評価しています。

 

特に運動制限が必要な人以外は、どんな身体・精神状況でも運動は非常に重要であるということが改めて確認されました。

人間は考え悩みます。自分を否定し取り返しがつかない状況に、自信を追い込む可能性が常にあります。それを防ぐために家族・周囲の人たち或いは社会の人々が寄り添っていく必要があると強く思います。

一回の記事でおさまるような内容ではありません。

これからもこのテーマを時々記事にさせていただきたいと思っております。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

f:id:hiro_chinn:20220109091026p:plain