ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

パラリンピックとロックダウン

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東京オリンピックが終わりました。筆者は当初開催に反対でしたが始まってみると日本の選手の活躍に目を奪われていきました。この気持ちの変化に対して若干の自己嫌悪感を抱くとともに、この変化への理由を知りたいと思う気持ちに囚われようになりました。これに一つの答えを与えてくれたのがこの記事です。

 

news.yahoo.co.jp

 

『 五輪開催に反対していた多くの人は、五輪そのものが嫌いで反対していたのではない。
選手の活躍を観たり、応援したいという気持ちの反面、感染状況が一向に収束を見せないなかでの強行開催や、穴だらけの「バブル方式」などといった不十分な対策に不安を覚え、反対していたのである。
反対していた人があれほど多かったのに、いざ始まってみると、多くの人々が選手の活躍に歓喜してオリンピックを観ているということは、一見矛盾しているように思えるが、矛盾でも何でもないし、手のひら返しというわけでもない。元々からあった相矛盾する心理の一方が表に現れているだけである。

さらに、長引く自粛や感染症への不安のなかで、鬱積した気持ちを晴らしたいという気持ちも影響し、久しぶりの明るいニュースに歓喜しているのだといえるだろう。これもまた自然な心理である。
私が五輪に反対であった一番の理由は、感染対策を呼び掛ける一方、五輪という「お祭り」を開催することで、「出かけるな」「出かけろ」という矛盾したメッセージになってしまうということであった。それが人流の増加を招き、感染の再拡大につながることを危惧していた。
矛盾したメッセージを受け取ると、人は往々にして自分の都合のよいほうを受け取り、他は無視してしまう。つまり、それまで外出を我慢していた多くの人は、「出かけろ」というメッセージのみを受け取ってしまうのだ。
この五輪の熱狂のなかで、われわれが忘れてはいけないことが3つある。
1つは、政府は感染症蔓延のなかで、五輪開催という「賭け」に出たという事実である。この場合、賭けられたのは、われわれ国民の生命や健康である。
これは大会が成功しようが、日本人選手がたくさんメダルを取ろうが、そういう結果論とは関係ない。どのような結果となっても、政府がこのような「賭け」に出たという事実は変わらない。このことは決して忘れてはならないことである。
第2に、「パンとサーカス」という言葉があるように、政府は国民にオリンピックという「サーカス」を見せることで、これまでの感染症対策や経済対策などに対する不満を忘れさせようとしているということだ。

第3に、現実にコロナ禍はまだまだ終わってはいない。このことも決して忘れてはいけない。』

この記事の中に、筆者の気持ちが凝縮されています。

この記事の筆者、臨床心理学の専門家である原田先生は、ほかの記事で以下のように述べています。

news.yahoo.co.jp

 

『 感染爆発なのに危機感がない、その理由の1つは「楽観バイアス」である。「これまで外出や外食をしてきたが、感染しなかった」「周りに感染者はいない」などといった個人的経験を根拠として、現実よりもコロナや自分の感染リスクを低く評価してしまう認知のゆがみを抱くようになったのである。
実際、国際医療福祉大の和田耕治教授の調査によれば、「日常生活ではコロナに感染すると思うか」という問いに対し、首都圏在住の40-50代の男性のうち「思わない」「あまり思わない」と答えた人が、54%いたという。
このようなさまざまな心理的メカニズムの影響によって、感染爆発という状況にあっても、危機感を抱く人が少なくなってきていると考えられる。

今回の緊急事態宣言が出されたとき、さらには宣言の対象地域が拡大されたとき、私は何か新たな対応策が出されるものと思っていた。しかし、政府の対策は相変わらずで、飲食店などの休業・時短要請に加え、「不要不急の外出の自粛をお願いします」というメッセージを出すにとどまっていた。
これでは、緊急事態に馴れ、楽観バイアスを抱いたりしている多くの国民に「今回もこれまでと同じで大したことない」という「メタメッセージ」(言外の別の意味)を伝えてしまうことになる。
国民の心理が大きく変化しているのだから、対策もそれに合わせて変えていく必要がある。そうしなければ効果は期待できない。政府はいい加減にこのことに気づくべきだ。
緊急事態宣言に馴れてしまい、反発を強めている人々に、さらなる恐怖メッセージを伝えて不安を煽ろうとすると、逆効果になるということである。これを「心理的リアクタンス」と呼ぶ。自由や行動の制限に対して反発する心理を指す用語である。

政府のとるべき効果的な対策とは、行動科学に基づいた「ナッジ」を活用した対策である。
「ナッジ」とは、人々の選択の自由を保持しながら、ある方向へと誘導するような介入のことである。
すぐにでもできる方法としては、接触確認アプリCOCOAを活用して、感染者との接触が1日確認されなければ100円を付与するなどの方法が考えられる。1年で36,500円だが、もらえるほうはゲーム感覚で楽しめるうえ、一律に10万円配るのに比べるとコストは小さい。』

 

東京オリンピックは終わり、次のパラリンピックに当然のように向かっています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/5e0095bae8181b468570d78b338f62507da99564

立民が田村厚労相に緊急要請「五輪選手村を新型コロナ患者の宿泊療養施設に使って」
8/11(水) 17:57配信  東スポWeb

 

筆者も先の記事で同じ提案をしました。

drhirochinn.work

宿泊療養施設数が乏しい今日、パラリンピックは、さらに悪影響を与えています。

 

www.nippon-foundation.or.jp

日本財団が、宿泊療養者に用意した「日本財団災害危機サポートセンター」を、再びパラアスリートの練習拠点とすることにしたと報じられました。

つまり医学的管理が十分できる宿泊療養施設を故意に減らしたのです。

これは1例です。日本国民の差し迫った危機や命より障害者の祭典のほうが大切なのでしょうか。

今中止することによって、政府の感染症対策への本気度が伝わってきます。

 

日本政府や東京都は、バカの一つ覚えで相変わらずお願いモードの要請を続けています。

 

news.yahoo.co.jp

 

もうロックダウンしかないでしょう。

今後どんどん感染者・重症者・死亡者が増えていったら、以前のニューヨークやインドやブラジルのように、棺で町中埋め尽くされる光景が東京でも広がるでしょう。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

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