ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

新型コロナウイルスに対する消毒薬の効果

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新型コロナウイルス感染症との我々の戦いも、早くも1年半になろうとしています。

我々日常診療の中でコロナウイルスの除菌・防菌は重要事項になります。

この1年半、時々消毒薬に関する研究が発表されてきました。

今回は、我々がよく使う消毒薬のエタノール(EA)、イソプロパノール(IPA)、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、塩化ベンザルコニウム(BAC)のコロナウイルスに対する効果を、剖検材料ですが人の皮膚上で実験したものです。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8064898/

Clin Microbiol Infect. 2021 Apr 24
doi: 10.1016/j.cmi.2021.04.009 [Epub ahead of print]

PMCID :PMC8064898
PMID:33901670
ヒトの皮膚に存在するSARS-CoV-2およびインフルエンザウイルスに対する消毒剤の有効性:モデルベースの評価
廣瀬量平、 他

 

メソッド
エタノール(EA)、イソプロパノール(IPA)、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、塩化ベンザルコニウム(BAC)を標的消毒剤として使用しました。まず、SARS-CoV-2およびインフルエンザAウイルス(IAV)に対する消毒剤の有効性をinvitroで評価しました。次に、ヒトの皮膚に対するSARS-CoV-2およびIAVに対する消毒剤の有効性を、各消毒剤を皮膚に5〜60秒間適用した後、皮膚に存在するウイルスを滴定することによって評価しました。

結果
ヒトの皮膚のSARS-CoV-2とIAVはどちらも、5秒以内に40%〜80%のEA70%のIPAによって完全に不活化されました。ただし、20%EAによってほとんど不活化されませんでした。インビトロ評価は、EAおよびIPAと比較して、CHGおよびBACが消毒効果に関して有意に劣っていることを示した。逆に、SARS-CoV-2に対するCHGおよびBACの消毒効果は、in vitroよりもヒトの皮膚で高く、濃度および反応時間の増加とともに増加しました

 

この研究は、アルコールベースの消毒剤を使用した適切な手指衛生の実践が、SARS-CoV-2が人間の皮膚に付着するのを効果的に防ぐことを示しました。

 

我々がよく使う、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、塩化ベンザルコニウム(BAC)はinvitroでは、消毒効果がかなり低いが生体上では効果が相応にあるということがわかりました。

我々は、塩化ベンザルコニウム(BAC)の速乾性の手指消毒剤をよく使いますが、できればアルコールベースの手指消毒剤のほうがいいということがよくわかりました。

今までこの、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、塩化ベンザルコニウム(BAC)の効果の研究があまりなっかたので、この研究は、筆者にとって有意義でした。

さらに言えば、濃度別のポビドンヨードの効果もこの実験系で調べていただけるとさらにありがたかったと思います。通常診察室内での手指消毒には使いませんが、手術前の手指洗浄や皮膚創部の消毒にはよく使われるためです。

 

この論文は、独自に実験系を確立し、生きた人の皮膚上に近い環境での、コロナウイルスに対する消毒薬の効果を確かめたということで、意義のある研究だったと思います。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

 

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