ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

C O I (利益相反)

 

皆さんは、C O I という言葉をご存じでしょうか?

学術論文や専門誌を読まれるかたは、とっくに知っておられることと思いますが、よくわからないというかたに、少しご説明させていただきます。

「日 本 医 学 会 COI 管理ガイドライン」を参考に お話させていただきたいと思います。

http://jams.med.or.jp/guideline/coi_guidelines.pdf

研究機関の長や研究者が営利企業への参入を多くすればするほど,教育・研究という学術機関としての社会的責任と,産学連携活動に伴い生じる個人の利益が衝突・相反する状態が必然的・不可避的に発生してきます。こうした状態が  Conflicts of Interest(COI;利益相反と和訳されている) と呼ばれ,医学系研究の独立性が損なわれたり,結果公表にかかる企業寄りのバイアスリスク(研究バイアス,出版バイアス,報告バイアス)が懸念されるなど,時に社会問題化しています。

バイアスとは、統計学の用語で、母集団の要素が標本として平等に選ばれていない、または推定すべき量を、何らかの理由で不正確に推定しすぎていること。或いは偏った見方のことです。

 

 産学連携により医学系研究を積極的に推進している研
究機関だけにとどまらず,教育活動を行う専門学会や医学雑誌発行者においても研究成果を社会に向けて公表する研究者を対象とした COI の適切な管理が求められています。

 

我が国における COI 管理に関する本格的な取り組みは,文部科学省の委託調査として「臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班」にてなされ,2006年3月に「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」の公表が始まりとなりました。

このガイドラインは,経済的な利益などに関して相反状態にある個人や研究者が人間対象の臨床研究を行う場合の利益相反にかかる指針を,各研究機関,学術団体などにおいて定めることを求めたものになります。

2008 年度に厚生労働省から「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針」が公表され,研究助成金を受けている研究者を対象とした COI 管理の義務化が明文化されました。

COIの開示基準の原則は、日本医学会の利益相反ガイドライン、実運用は、雑誌や学会ごとに多少異なります。

 

共同で発表している開示基準があります。

 医学系研究の利益相反(COI)に関する共通指針
(Policy of Conflict of Interest in Medical Research)
内科系関連学会(日本内科学会、日本肝臓学会、日本循環器学会、日本内分泌学会、日本糖尿病学会、日本腎臓学会、日本呼吸器学会、日本血液学会、日本アレルギー学会、日本感染症学会、日本老年医学会)

(1)医学系研究に関連する企業・法人組織や営利を目的とした団体(以下、企業・組織や団体という)の役員、顧問職については、1 つの企業・組織や団体からの報酬額が年間 100 万円以上とする。
  (2) 株式の保有については、1 つの企業についての 1 年間の株式による利益(配当、売却益の総和)が 100 万円以上の場合、あるいは当該全株式の 5%以上を所有する場合とする。
(3)企業・組織や団体からの特許権使用料については、1 つの権利使用料が年間 100 万円以上とする。
(4)企業・組織や団体から、会議の出席(発表、助言など)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)については、一つの企業・団体からの年間の講演料が合計 50 万円以上とする。
(5)企業・組織や団体がパンフレット、座談会記事などの執筆に対して支払った原稿料については、1 つの企業・組織や団体からの年間の原稿料が合計 50 万円以上とする。
(6)企業・組織や団体が提供する研究費については、1 つの企業・団体から、医学系研究(共同研究、受託研究、治験など)に対して、申告者が実質的に使途を決定し得る研究契約金の総額が年間 100 万円以上のものを記載する。
(7)企業・組織や団体が提供する奨学(奨励)寄附金については、1 つの企業・団体から、申告者個人または申告者が所属する講座・分野または研究室に対して、申告者が実質的に使途を決定し得る寄附金の総額が年間 100 万円以上のものを記載する。
(8)企業・組織や団体が提供する寄附講座に申告者らが所属している場合とする。但し、申告者が実質的に使途を決定し得る寄附金の総額が年間 100 万円以上のものを記載する。
(9)その他、研究とは直接無関係な旅行、贈答品などの提供については、1 つの企業・組織や団体から受けた総額が年間 5 万円以上とする。

 と発表されています。

 

 研究者が研究活動に取り組む過程で発生する COI 状態を適切に管理することにより、研究の実施や成果の発表、それらの普及・啓発などの活動におけるバイアスリスクを管理し、中立性と公正性を維持した状態で推進する事によって、研究の主な目的である社会的責務を果たすことにつながるものと思います。

 

 話は変わりますが、研究の利益相反というと、少し前に問題となっていた日本学術会議と中国の「千人計画」の関係は、どうなんでしょう。

報道機関や個々の報道内容も利益相反は、考えなくてもいいんでしょうか。中立性と公平性はどの分野でも一番大切な事柄であるはずです。

 最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。