ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

テレワークやスポーツの秋で膝の痛み出ていませんか?

整形外科外来にて
画像検査をします
手術治療


自宅でのテレワーク中、床の上であぐら姿勢をとって膝の痛みが出たり、テレワークの運動不足を解消しようとしていきなりジョギングしたり、スポーツジムに通ってトレーニングを始めたりして膝が痛み始めていませんか?。
50歳以上の日本人の中で、X線所見上で変形性膝関節症と診断されるのは2400万人、うち痛みがあるのは820万人(男性210万人、女性610万人)と推計されています。

ひざ痛がおよそ1週間以上続くようなら、お近くの整形外科を受診してください。40歳以上の男女のひざ痛で、外傷以外のほとんどの原因は変形性膝関節症です。
それでは実際に整形外科医院に行かれてからの流れについて、お話したいと思います。

整形外科外来にて

我々は患者さんを呼び入れます。まず病歴を聞きます。いつからどういう時に痛むか。何かきっかけとして思い当たることはないか。以前にいたんだことはあるか、など詳しく聞きます。

次に診察台に寝ていただいて”生の膝”の所見を取ります。
関節内に液体貯留はあるか。局所に熱感はあるか。膝蓋骨と大腿骨の間に痛みの原因はあるか。タナ(関節内の滑膜ひだ)を押してみて圧痛はないか。
内外側の関節裂隙に圧痛はないか。下腿を左右にストレスをかけて内外側の側副靭帯に緩み、痛みはないか。今度は膝を少し曲げて下腿を前方や後方にストレスをかけて前十字靭帯、後十字靭帯が効いているか見たり、いろいろ所見を取ります。

画像検査をします


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その次にレントゲン検査をします。膝のXpを見て関節裂隙は狭くないか。骨棘はどこにどの程度あるか。大腿骨と脛骨の配列はどうか。骨硬化像はないか、などチェックします。レントゲン検査は基本的な検査ですので妊娠中か、患者さんが同意しない場合以外は実施します。

次にMRIをとります。当院ではおおむね当日にとれます。MRIでは半月板の摩耗の程度、断裂の有無、前十字、後十字靭帯の損傷の有無など確認します。また大腿骨、脛骨内に骨髄内病変はないか(あると変形性関節症の程度が上がる)。関節液は増えているか、滑膜の増生はあるかなど、MRIでは膝関節のすべての構成要素が描出されるので非常に詳しく評価できます。

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関節液の性状を確認することも膝痛を来す疾患の鑑別に有用です。しかし針を刺すことに抵抗がある患者さんには実施しません。

変形性膝関節症と診断されれば、内服薬、外用薬を処方し、リハビリテーション(運動器リハビリテーション)の指示をPT宛てに出し患者さんにはリハビリ室に回っていただきます。何回か通って頂いて痛みが軽減しないようなら、ヒアルロン酸の関節内注射を併用します。(週1回、5回まで)
基本的にはリハビリが一番重要であり、膝は体重を支え、場合によっては体重の4倍以上の重量を支えますのでとりわけ大腿部の筋力と膝周りの靭帯のバランスが重要です。そのためのリハビリということになります。
ホームエクササイズ(自主トレ)も大変重要です。PTが直接指導したり、我々もパンフレットをお渡ししてご説明したりします。

手術治療

外来での保存的な治療でよくならない場合は、厳密な適応基準はまだありませんが、手術治療を考える必要があります。
 高位脛骨骨切り術(H T O )
 人工膝関節手術(T K A )
などです。
両方とも以前、病院勤務の時やらせていただきましたが、難しい手術ではありませんが、T K A は特に血栓症や感染に注意が必要です。
私自身もそうですが、手術はできるだけ受けたくないと考えますので、外来での治療を頑張ります。多くの方が手術に至らないでよくなっていかれます。
外来治療の目標は疼痛軽減による A D L (日常生活上の動作)の改善とフレイル(ロコモティブシンドローム)の予防、介護予防です。
統計上変形性膝関節症の患者さんの7割は病院にかからないというデータがあります。
病院での流れを概ね知っていただければ、その壁も少し低くなるのかと考え、具体的に患者さんの受ける内容と、医師側はどんなことを考えどんな診察や検査を実施するのかなどを、読むのが面倒なくらいに書かせて頂きました。
これはあくまで当院でのことですが、”生の膝”もさわらず検査だけする医師は信頼性に欠けますのでご注意ください。

次稿では膝の診断に大変重要な検査機器である M R I について少しお話ししたいと思います。





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