ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

ビタミンD

 

皆さんおはようございます。今日は、ドジャースーカブス戦を見るために朝早くから起きたため、ブログを書かせていただいております。

今日の記事は、筆者の仕事でもよく処方させていただく、ビタミンDについて書かせていただきます。

ビタミンDにはD2からD7の6種類ありますが、D4~D7は食品にはほとんど含まれておらず、活性も低いため、一般的には高い生理活性を示すビタミンD2(エルゴカルシフェロール)とビタミンD3(コレカルシフェロール)の2つに大別されます。
ヒトを含む哺乳動物では、ビタミンD2とビタミンD3はほぼ同等の生理的な効力をもっています。ビタミンDは肝臓と腎臓を経て活性型ビタミンDに変わり、主に体内の機能性たんぱく質の働きを活性化させることで、さまざまな作用を及ぼします。ビタミンDの生理作用の主なものに、正常な骨格と歯の発育促進が挙げられます。また、小腸でのカルシウムとリンの腸管吸収を促進させ、血中カルシウム濃度を一定に調節することで、神経伝達や筋肉の収縮などを正常に行う働きがあります。
ビタミンDが欠乏すると、腸管からのカルシウム吸収の低下と腎臓でのカルシウム再吸収が低下し、カルシウムが不足して低カルシウム血症となります。そのため、骨の軟化がおこり、成人、特に妊婦や授乳婦では骨軟化症になります。また、小児の場合は骨の成長障害が起こり、姿勢が悪くなったり、足の骨が曲がったり、くる病になったりします。

健康長寿ネット
ビタミンDの働きと1日の摂取量
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-d.html

 

前糖尿病と糖尿病はサルコペニアの独立した危険因子であることが報告されています。今回、前糖尿病患者への活性型ビタミンD3投与がサルコペニアを予防するかどうか調べた結果、筋力を増加させることでサルコペニアの発症を抑制し、転倒のリスクを低減させる可能性があることが、産業医科大学病院の河原 哲也氏らによって明らかにされました。

The Lancet Healthy Longevity Home
前糖尿病成人のサルコペニア予防における活性型ビタミンD治療(DPVD補助研究):ランダム化比較試験 公開日: 2024 年 3 月 1 日

https://www.thelancet.com/journals/lanhl/article/PIIS2666-7568(24)00009-6/fulltext

 

また、ビタミンDサプリメント(2,000IU/日)の連日服用により、がん種に関係なくがん死亡率が減少したことが報告されています。今回、中国・北京大学のYu Bai氏らががん患者におけるビタミンD濃度と全死因死亡およびがん特異的死亡との関連を調査した結果、一定値以上のビタミンD濃度まで高くなるとそれらのリスクが大幅に減少することが明らかになりました。

がん死亡率に対するビタミンD 3補給の有効性:ランダム化比較試験の系統的レビューと個々の患者データのメタ分析
老化研究のレビュー
87巻、2023年6月, https://doi.org/10.1016/j.arr.2023.101923

 

さらに、カルシウムとビタミンDを組み合わせたサプリメントの摂取は、さまざまな集団における転倒リスクの減少と統計的に有意に関連しています。

SpringerLink
高齢者の転倒に対するビタミンDとカルシウムの補給の効果
系統的レビューとメタ分析
公開日:2017 年 7 月 17 日https://link.springer.com/article/10.1007/s00132-017-3446-y

 

ビタミンDは、サルコペニアの予防や高齢者の転倒防止効果、がんの死亡率の低下など多くのことに関与しているということがわかってきました。一方、ビタミンDをとりすぎると、高カルシウム血症が起こり、血管壁や腎臓、心筋、肺などに多量のカルシウムが沈着します。そのため腎機能障害や食欲不振、嘔吐、神経の興奮性の亢進などの症状が現れることがあります。

また、ビタミンD欠乏症、骨量低下、骨粗鬆症を有していない概して健康な中高年以上の集団では、ビタミンD3を摂取してもプラセボと比較し骨折リスクは有意に低下しないことが、米国・ハーバード・メディカル・スクールのMeryl S. LeBoff氏らが行った「VITAL試験」の補助的研究で示されました。ビタミンDサプリメントは、一般集団において骨の健康のために広く推奨されています。しかし、骨折予防に関するデータは一貫していません。

The New England Journal of Medicine 
中年および高齢者におけるビタミン D の補給と偶発的な骨折
2022 年 7 月 27 日発行
N Engl J Med 2022 ; 387:299~309
DOI: 10.1056/NEJMoa2202106

 

ビタミンDは、骨粗しょう症の重要な薬の一つですが、治療中患者さんの中には一定数、Ca濃度が高くなったり、低くなったりする患者さんがおられるため、我々は患者さんにビタミンDを処方する前や処方しているときは、少なくとも6か月に一回は血中のCa濃度などを測定しています。

医学的な管理下でビタミンDを摂取されることをお勧めします。