ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

睡眠と減量

 

ゴールデンウィークも後半に入っていますが、皆さんは如何がお過ごしでしょうか?

筆者は、月曜日は仕事だったのですがこの日の夜、疲れていたようで普段以上の9時間ほど睡眠をとってしまいました。さすがによく眠れた翌日は体調も良く一日を過ごせました。

そこで睡眠に関する研究を一つご紹介いたします。

Medical Tribune
実証された「寝る大人は痩せる」
https://medical-tribune.co.jp/rensai/2022/0426545409/

 

昔から「寝る子は育つ」とよく言われ、このことはどうも医学的にも確かそうである。
一方で、大人においては「寝ない大人は太りやすい」とか「寝ない大人は糖尿病になりやすい」といったことを示す疫学的データは多数あり、以前にもそうしたデータをご紹介したことがある。

米国では2015年に7~9時間の睡眠時間が推奨されているが(Sleep 2015; 38: 843-844)、実は睡眠不足の人の睡眠時間を延長させたら、代謝障害が改善されるかどうかを検証したRCTはなかったそうである。

Sleep
2015年6月1日; 38(6):843–844。
オンラインで公開2015年6月1日 doi:  10.5665 / sleep.4716
健康な成人に推奨される睡眠量:アメリカ睡眠医学会と睡眠研究会の共同コンセンサスステートメント
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4434546/

コンセンサスステートメント
成人は、最適な健康状態を促進するために、定期的に1日7時間以上睡眠をとる必要があります。
1)定期的に1日7時間未満の睡眠は、体重増加と肥満、糖尿病、高血圧、心臓病と脳卒中、うつ病、死亡リスクの増加などの健康への悪影響と関連しています。1日7時間未満の睡眠は、免疫機能の低下、痛みの増加、パフォーマンスの低下、エラーの増加、事故のリスクの増大にも関連しています。
2)定期的に1日9時間以上寝ることは、若い成人、睡眠負債から回復している人、病気の人に適しているかもしれません。他の人にとっては、1日9時間以上の睡眠が健康上のリスクと関連しているかどうかは不明です。
3)睡眠が少なすぎる、または多すぎると心配している人は、医療提供者に相談してください。

 

このたび、米・シカゴ大学のグループが睡眠時間を8.5時間にするよう指導するという介入を行うことにより、エネルギー摂取量が減少し、エネルギー消費量は維持され、結果としてわずか2週間で体重が0.48kg減少した(コントロール群とは0.87kgの差異がついた)ことを報告した。

 

Randomized Controlled Trial JAMA Intern Med. 2022 Apr 1;182(4):365-374. doi: 10.1001/jamainternmed.2021.8098.
実生活環境で太りすぎの成人の客観的に評価されたエネルギー摂取量に対する睡眠延長の効果:無作為化臨床試験
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8822469/

 

デザイン、設定、および参加者
ランダム化臨床試験は、2014年11月1日から2020年10月30日まで実施されました。参加者は21〜40歳の成人で、肥満度指数(キログラム単位の体重をメートル単位の高さで割った値)が25.0から29.9であり、習慣的な睡眠時間は1日あたり6.5時間未満でした。

 

介入
ベースラインでの2週間の習慣的な睡眠期間の後、参加者は、就寝時間を8.5時間に延長することを目的とした個別の睡眠衛生カウンセリングセッション(睡眠延長グループ)または習慣的な睡眠を継続すること(対照グループ)のいずれかにランダムに割り当てられました。

 

結果
 睡眠時間は、睡眠延長群と対照群で1日あたり約1.2時間(95%CI、1.0〜1.4時間、P <.001)増加しました。睡眠延長群では、対照群と比較してエネルギー摂取量が有意に減少しました(-270 kcal / d; 95%CI、-393〜-147 kcal / d; P  <.001)。

結論と関連性
この試験では、睡眠の延長によりエネルギー摂取量が減少し、習慣的に睡眠時間を短縮した太りすぎの成人の実際の環境で負のエネルギーバランスがもたらされることがわかりました。長期間にわたって健康的な睡眠時間を改善および維持することは、肥満予防および減量プログラムの一部である可能性があります。

 

今回の研究は、睡眠時間が短い人に睡眠時間を延長させるとどうなるかという初めての研究でした。しかも、睡眠時間延長介入は、ものの見事にエネルギー摂取量を減らし、体重減量に成功していました。


睡眠衛生に関する個別の行動カウンセリングにおいて、参加者のライフスタイルの延長された就寝時間を可能な限り最善の方法で受け入れることを目的として提供され、彼らが就寝時間を延長することを妨げるかもしれない彼らのライフスタイルにおける潜在的な修正可能な要因と他の障壁についてのカウンセリングを受けました。

必要に応じて、睡眠パートナー、子供、他の家族、ペットに関連する要因が考慮され、就寝時間の延長を日常生活にうまく取り入れるための個別の推奨事項が提供されたとのことです。

就寝時間を延長するための2週間の在宅介入は、実際の生活条件での睡眠時間を増やすことに成功し、十分な睡眠をとることで、習慣的に睡眠を減らす太りすぎの若い成人の体重を促進する甘くて塩辛い食べ物への活力を高め、欲求を減らしました。

このように我々も自らのライフスタイルを変更して、睡眠時間を延長できれば肥満予防や減量につながる可能性があります。

しかしこの研究は、2週間だけですからより長期のデータも必要です。その生活習慣になっているのにはそれなりの理由があるはずですから、実際問題、より持続可能な新しいライフスタイルが設定できなければ意味がありません。

平均6.5時間から7.7時間に睡眠時間を延ばせれば健康的に痩せていける可能性があるということですので、過体重の方はやってみる価値がありそうです。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。