運動と健康の関係に関する研究はたくさんあります。つい最近も続けて2つの論文が目に留まりました。
疫学/医療サービス研究| 2022年1月17日
年配の女性の前向きコホート研究における毎日の歩数と歩数強度と糖尿病の発症との関連:OPACH研究
糖尿病ケア2022; 45(2):339–347
https://doi.org/10.2337/dc21-120解析対象は研究参加登録時点で糖尿病と診断されていなかった65歳以上の女性4,838人(平均年齢78.9±6.7歳)。腰に加速度センサー式歩数計を付けて1週間生活してもらい、1日当たりの歩数を運動強度別に把握。
最大6.9年(中央値5.7年)の追跡で395人(8.1%)が糖尿病を発症した。
1日の歩数が2,000歩多いごとに、糖尿病発症リスクは12%低下していた〔ハザード比(HR)0.88(95%信頼区間0.78~1.00)〕。
低強度での歩行の場合、1日当たり2,000歩多く歩くことによる糖尿病発症リスク抑制効果は非有意だった〔HR0.97(同0.73~1.29)〕。一方、中~高強度での歩行の場合、1日当たり2,000歩多く歩くことで、糖尿病発症リスクが14%有意に低下していた〔HR0.86(同0.74~1.00)〕。
高齢者は身体機能の低下のために、今回の研究で高い有効性が示された中~高強度での歩行が難しいことが少なくないと思われます。こういう人たちはどうしたらよいのかも、具体的に示していただけるとよかったと思います。
次は、長時間にわたってテレビを視聴するなど体を動かさない時間が長引くと、静脈血栓塞栓症(VTE)発症のリスクが35%上昇する可能性のあることが、英ブリストル大学のSetor Kunutsor氏らの研究から明らかになりました。
テレビ視聴と静脈血栓塞栓症:系統的レビューとメタアナリシス
European Journal of Preventive Cardiology、zwab220、https: //doi.org/10.1093/eurjpc/zwab220
公開: 2022年1月20日VTEは、ふくらはぎや太ももなどの下肢に血栓ができる深部静脈血栓症(deep venous thrombosis: DVT)と、できた血栓が血流に乗って流れ、肺の動脈を塞いでしまう肺動脈塞栓症(pulmonary embolism: PE)を合わせた疾患概念です。
Kunutsor氏らは今回、テレビ視聴とVTEの関連について調べるため、13万1,421人(平均年齢54〜65歳)のデータを含む3件の研究を対象にメタアナリシスを実施しました。
中央値で5.1年から19.8年に及ぶ追跡期間中に、964人の研究参加者がVTEを発症していました。解析の結果、1日に4時間以上テレビを視聴していた人では、テレビをほとんど、または全く視聴していなかった人と比べて、VTEリスクが35%高いことが示されました。これらの関連は、年齢や性別、BMI、身体活動とは無関係に認められました。
いわゆる座位行動のリスクに関しては、厚労省のホームページに掲載されています。
生活の中で座りすぎている人は、寿命が短く、肥満度が高く、2型糖尿病罹患率や心臓病罹患率が高いことが報告されています。
下記の図は、世界20か国における平日の座位時間を表しています。
https://www.mhlw.go.jp/content/000656521.pdf 2022年2月20日閲覧
日本人は座りすぎのリスクが高いとのことです。人種差がありますからそのまま日本人がVTEリスクの上昇に結び付くかどうかは、データを見ないとわかりませんが、いずれにしろ一般的リスクは高くなるものと思われます。
ブログは、書き続けたいと思いますが、根を詰めての長時間の座位行動に注意しながら続けていきたいと思っています。