感染を防ぐことを期待してやむおえず着用しているマスクですが、このマスクが人に与える印象はどうなのでしょうか?
顔の魅力がマスクによってどう変化するか確かめた研究があります。
まず以前日本の研究者が調べた論文があります。
原著
出入り自由
知覚される顔の魅力に対するサニタリーマスクの効果
宮崎有妃、川原潤一郎
初版:2016年4月13日 https://doi.org/10.1111/jpr.12116概要
現在、日本人女性の中には、化粧をしていないときよりもサニタリーマスクをつけている方が魅力的(または醜くない)であると考えているため、化粧をしていないときに顔を隠すためにサニタリーマスクを使用している人もいます。本研究では、顔の魅力の知覚に衛生マスクを着用することの影響を調べました。
日本の女性の信念に反して、サニタリーマスクを着用した魅力的な顔は、マスクを着用していない同じ顔よりも魅力的ではないと認識されたことが明らかになりました。これは、観察者がマスクを着用している顔の肉体的な魅力を過小評価する新しい現象であるサニタリーマスク効果を実証した最初の研究です。
サニタリーマスクとは対照的に、知覚される顔の魅力は、魅力の低い顔のノートブック/カードのオクルージョンによって改善されました。結果は、魅力の知覚に対するマスクによる閉塞の影響が他の一般的な物体によるものとは完全に異なることを示し、衛生マスクによる顔の閉塞が独特の効果を持っていることを示唆しています。
結論として、我々は、観察者がマスクを着用している顔の肉体的な魅力を過小評価するという新しい現象、サニタリーマスク効果を実証しました。この効果は、非常に魅力的な顔で明らかでした。この効果は、(a)閉塞による魅力の平均への回帰と(b)不健康の概念のプライミングの2つの要素に由来すると考えられます。
一般的にマスクをすると顔の魅力が落ちるという結果でした。
次につい最近の海外の研究です。
Cogn Res Princ Implic. 2022 Dec; 7: 1.
Published online 2022 Jan 10. doi: 10.1186/s41235-021-00351-9
閉塞の美しさを超えて:医療用マスクは、他の顔の覆いよりも顔の魅力を高めます
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8743690/概要
サージカルマスク効果(Jpn Psychol Res 58(3):261–272、2016のMiyazaki and Kawahara)は、医療用フェイスマスクが病気のイメージを促し、着用者の顔の魅力の評価を下げるという発見です。しかし、COVID-19のパンデミックの間、医療用マスクは魅力を高めることがわかっています(Pateletal。inPlastReconstruct Surg Glob Open 8(8)、2020)が、これは閉塞の一般的な影響であった可能性があります。この問題をさらに調査するために、女性の参加者には、医療用マスク、布製マスク、本で閉塞された、または閉塞されていない魅力の低いまたは高い一連の男性の顔が提示され、魅力について評価するように求められました。結果は、顔が医療用マスクで覆われている場合に最も魅力的であり、布製マスクで覆われている場合は、閉塞されていない場合よりもはるかに魅力的であると見なされたことを示しています。予想に反して、基本的な魅力は閉塞のタイプと相互作用しませんでした。これは、これが単に否定的な特徴の閉塞によるものではないことを示唆しています。現在の調査結果は、社会的望ましさの観点からのサージカルマスク効果と説明に反しており、医療マスクと介護専門職との関連が調査されています。
この論文の著者の一人Lewis氏は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前に実施された研究では、医療用マスクが魅力を低減させるとの結果が報告されていた。マスクを着用した人を目にするのが当たり前になった今、この結果がどう変わったのかを確認したかった。また、着用するマスクの種類により人の顔に対する印象が変わるのかどうかについても検討したいと考えた」と研究背景について述べています。
今回の研究は、COVID-19のパンデミックにより英国でマスク着用が義務付けられてから7カ月後に当たる2021年2月に、オンラインで実施されました。
男性の顔は、データベース上での評価を基に、「非常に魅力的な顔」と「あまり魅力的でない顔」のいずれかに分類されるものでした。また、男性の顔写真は、マスク未着用、布マスク着用、医療用マスク着用、手に持った黒い本で口元を隠した状態の4パターンが準備されました。
その結果、医療用マスクを着用した男性の顔に対する魅力度は、残りの3パターンの顔に対する魅力度よりも有意に高いことが明らかになりました。また、布マスク着用の顔に対する魅力度は、マスク未着用の顔に対する魅力度よりも有意に高かったが、本で口元を隠した状態の顔に対する魅力度と比べた場合には、有意差は認められませんでした。
Lewis氏は、「青いマスクを好ましく感じるのは、医療従事者が着用しているのを目にするためではないか、今や私たちは、青いマスクから介護職や医療職を連想するようになった。新型コロナウイルス感染に対して恐怖を感じる中、医療用マスクは私たちに安心感をもたらし、それを着用している人にポジティブな印象を抱くのではないだろうか」と説明しています。
マスクは欧米人にとって、早く取ってしまいたいだけの存在なのかと筆者はかねがね思っていましたが、長いCOVID-19との格闘を経て、そうではなくマスクは安心感をもたらし、それを着用している人にポジティブな印象を抱く存在なんだということがわかりました。
そしてマスクは感染を防ぎ、自分を守ってくれるというイメージが染みついた結果なのだと思います。
ただ着装側にとってマスクは煩わしく、外食を好む欧米人にとってその妨げになるので、撤廃を急いでいるだけなのかと思われました。
マスクに関する面白い研究をご紹介しました。
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