政権選択選挙も終わって、野党の自滅により辛うじてギリギリ数を維持できた与党政権ですが、「説明しない」「責任を取らない」「請求に応じない」という3Sをこの先も続けていると、来年の参院選は全く結果がわからなくなるものと思われます。
政権や官僚が常に心掛けるべきは「情報公開」と思いますが、今の新型コロナウイルスワクチンに関してはどうでしょうか?
我々臨床医に定期的に届けられる雑誌に「月間保団連」という雑誌があり、この11月号に掲載された記事があります。「新型コロナウイルスワクチンにおける情報公開」というタイトルで名古屋大学名誉教授の小島勢ニ先生が寄稿されています。
概要で「新型コロナウイルスワクチンについてのデマや陰謀論がネット上で拡散されていることも影響して、各国でワクチン接種率が頭打ちになる傾向がみられる。米国やデンマークの市民を対象に行われた調査では、情報公開が不十分な場合に当局への信頼が低下して、陰謀論を信じる割合が多くなった。現在、日本でも接種が進んでいるが、ワクチン接種後の死亡率やアナフィラキシーショックについての十分な情報が公開されているのか。国民が適切に判断するためにも、情報公開のあり方について幅広い議論が求められる。」と書かれています。
米国やデンマークの市民を対象に行われた調査とは、
COVID-19ワクチンの否定的な特徴についての透明なコミュニケーションは、受け入れを減少させるが信頼感が増す
Department of Political Science, Aarhus University, Aarhus DK-8000, Denmark
Edited by Elke U. Weber, Princeton University, Princeton, NJ, and approved May 4, 2021 (received for review, November 28, 2020)
https://www.pnas.org/content/pnas/118/29/e2024597118.full.pdf方法
2020年10月14日から10月21日の間に、事前にCOVID-19に対するワクチンの特徴に関する情報を公開する前に、3,436人のアメリカ人と3,427人のデンマーク人を対象としました。
COVID-19に対する架空のワクチンに関する意識調査を行いました。この調査は、調査会社のYouGovによって行われました。
COVID-19に対する新しい架空のワクチン「COVACID」に関するさまざまな情報を参加者に無作為に割り当てました。結果
COVID-19に対するワクチンが急速に開発・展開されていく中で、研究者たちは「根本的な透明性」というアプローチを求めてきました。
否定的な情報がワクチンの摂取を減少させる可能性があるとしても、ワクチンの情報を透明に公開する「根本的な透明性」のアプローチが求められています。
陰謀論の心理に関する理論と一致して、これらの呼びかけは、透明性の欠如が医療当局への信頼を低下させ、ワクチン接種を抑制する可能性があると予測しています。
その結果、パンデミック中およびパンデミック後の保健当局の長期的な能力が制限される可能性があります。アメリカ人とデンマーク人の代表的な大規模サンプルを対象に実施された事前登録済みの実験に基づき、以下のような結果が得られました。
今回の研究では、アメリカ人とデンマーク人の大規模な代表サンプル(N > 13,000)を対象に、事前に登録された実験に基づいて、曖昧なワクチン情報伝達と、ワクチンの特徴をポジティブまたはネガティブに開示する透明な情報伝達の効果を比較しました。
その結果、透明なネガティブ・コミュニケーションは、現在のところ、ワクチンの受け入れに悪影響を及ぼす可能性がありますが、医療機関に対する信頼を高めることができることが示されました。そして保健当局への信頼を高めることを示しています。一方、曖昧で安心させるようなコミュニケーションは、ワクチンの受容性を高めることはなく、信頼性を低下させ、陰謀論の支持を高めることにつながります。
興味深い研究です。
ワクチンのネガティブ情報の可能性として小島先生は、まず日本のワクチン接種後の死亡件数を挙げられています。
「ワクチン接種が死亡に影響しなければ、ワクチン接種後の死亡例の報告はほぼ毎日一定と思われる。死亡報告が554件の時点でワクチン接種後3週間における毎日の死亡報告を見ると、接種当日の死亡が25件、翌日が98件、翌々日が54件と接種後1週間に明らかな集積が見られ、8日以降はほぼ一桁となっている。10件までの死亡はベースラインに含まれると考えられるが、接種1週間以内の10件を超える死亡は、ワクチン接種と何かしら関連すると考えるのが自然と思われる。」
「ワクチン接種後の死亡報告については、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で、死亡とワクチンとの因果関係について検討されている。1093件の中でワクチン接種と死亡との因果関係が否定できないとされた事例は1件もなく、因果関係が認められないとされたものが8件。残り1085件は情報不足等により評価できないとされている。」
またワクチン接種後のアナフィラキシーの頻度も判定不能の症例が多すぎるといわれています。
「ワクチン接種後のアナフィラキシーの頻度も厚労省のホームページに掲載されている。これまでに、副反応として2571件のアナフィラキシーが報告されているが、部会ではブライトン分類に従って、報告例をアナフィラキシーに合致するか判定している。カテゴリー1から3は合致するがカテゴリー4は十分な情報が得られておらずアナフィラキシーと判定できない。部会の判定では、カテゴリー1から3と判定された報告例が464例(18%)、カテゴリー5と判定された報告例が94件(4%)、残りの2013件(78%)は、十分な情報がないとのことでアナフィラキシーとは判定されずに、カテゴリー4と分類された。」
筆者もカテゴリー4症例を見てみましたが、臨床医の立場からするとアナフィラキシーショックとして治療開始すべきものが多くありました。
「部会がブライトン分類でカテゴリー1から3と判定した症例とカテゴリー4と判定した症例について、年齢、接種から発症までの時間、アレルギーの既往歴、入院治療やアドレナリン投与の頻度を比較してみたが、両グループ間に全く差は見られなかった。」とも述べています。
現在日本で政府や官庁から伝わる情報に関して、疑いの念を持つ国民は残念ながら少なからずおられると思います。ワクチン接種率に関して国内で、2回接種完了者は11月12日現在74.7%ですがそろそろ頭打ちになっています。接種率の分母は全人口とのことですので接種対象者を分母とするとどういう数字になるのかわかりませんが、今でも感染者の多くは未接種者ですからできるだけ100%に近づける必要があると思います。
12歳未満の子供へのワクチン接種に関しては賛否両論あります。こどもは基礎疾患のある子ども以外は、感染しても重篤にはなりませんので、打つとしたら将来出てくるであろう国産の不活化ワクチンを打つことにして、今は子ども以外の国民の接種率をもっと上げることが急務です。
そのためにも、より透明性のある情報公開が必須であると思われます。新政権に期待したいと思います。