ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

第6波

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現在コロナ感染者数が引き続き非常に低い数字で推移しており、ウイルス自滅説すら飛び交っていますが、その正しい理由は誰も説明できていません。

ワクチン効果の低下などに関しては、過去の記事でお話してきました。

drhirochinn.work

 

先日いつも詳細な研究を提供してくれる米国退役軍人保険局のデータがまた示されました。

Science
2021年の米国退役軍人におけるSARS-CoV-2ワクチンの予防と死亡
SCIENCE•4 Nov 2021•First Release•
DOI: 10.1126/science.abm0620
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abm0620

概要

米国人口の2.7%をカバーする退役軍人保健局における、感染(VE-I)および死亡(VE-D)に対するSARS-CoV-2ワクチンの有効性を、ワクチンの種類別に報告します(n = 780,225)。

2021年2月から10月にかけて、VE-Iは87.9%から48.1%に低下し、ヤンセンワクチンの低下が最も大きく、VE-Iは13.1%になりました。ブレイクスルー感染は死亡のリスクを高めましたが、ワクチンはデルタサージ中に感染した人の死亡を防ぎ続けました。2021年7月から10月まで、65歳未満の場合、死亡に対するワクチン有効性(VE-D)は、どのワクチンでも81.7%でした。Janssenの場合は73.0%、Modernaでは81.5%、Pfizer-BioNTechの場合は84.3%でした。

65歳以上のVE-Dは、Janssenで52.2%、Modernaで75.5%、Pfizer-BioNTechで70.1%でした。

私たちの調査結果は、COVID-19ワクチンが感染と死を防ぐための最も重要なツールであり続けるという結論を支持しています。

 

死亡予防効果はある程度維持されますが、発症予防効果はファイザー社製ワクチンもモデルナ社製ワクチンもかなり低下します。そうして発症した人は、ほかの人に感染させる可能性があります。

 

次にCareNetという医療情報サイトの記事をご紹介します。

CareNet  山口 佳寿博 氏、田中 希宇人 氏
本邦ではなぜ夏場の第5波を克服することができたのか?

PfizerのBNT162b2を中心にコロナ感染症に対するワクチン接種は2020年12月より世界各国で積極的に進められている。本邦においても2021年4月から一般成人に対するワクチン接種(Pfizer、Moderna)が開始され、10月29日現在、全人口の71.2%(65歳以上の高齢者が最も高く90.6%、12~19歳の若年者が最も低く47.8%)が2回目接種を終了し(首相官邸ホームページ. 新型コロナワクチンについて. Oct. 29, 2021)、本邦はワクチン接種先進国(優等国)の一つに数えられるようになっている(2回接種率:カナダ、イタリアに次ぎ世界第3位)。その結果として、本邦のコロナ第5波は9月初旬より急速に終焉に向かっている。しかしながら、7月以降、ワクチン接種先進国でワクチン接種者におけるDelta株新規感染の急激な増加という新たな問題が発生しており、本邦もこの問題に早晩直面するものと考えておかなければならない。Delta株による新規感染はワクチン接種開始が早かったイスラエル、カタールなどの中東諸国、英国などの欧州諸国、米国などを中心に顕著になっており、主たる原因は、前項で述べたワクチン接種後の液性免疫の経時的低下である。ワクチン接種を早期(2020年の12月)に開始した国では、ワクチン2回接種後6ヵ月以上経過した国民の数が多くなり、これらの人々では、ワクチン接種により誘導された液性免疫が時間経過とともに低下し、Delta株を中心とする変異株感染に対する予防効果が低い状態に維持されているものと考えなければならない。一方、本邦では、ワクチン接種開始時期の遅延が幸いし、Delta株がまん延し出した2021年の6月以降になってもワクチン接種によって形成された液性免疫の低下が少なくDelta株に対する予防効果が有効域に維持されている国民が多く存在していたものと推測される。それ故、ワクチン接種を昨年の12月早々から開始した国々とは異なり、本邦では、夏場のDelta株による第5波を“運よく”乗り越えることができたものと考えることができる。しかしながら、2021年の12月以降になると、本邦でもワクチン2回接種後6ヵ月以上経過した人たちの数が増加し、3回目のワクチン接種など何らかの有効な施策を導入しない限り、液性免疫低下に起因するDelta株由来の第6波が必然的に発生するものと考えておかなければならない。
ワクチン接種後の液性免疫は、野生株、従来株、Delta株を中心とする変異株の別なく、月単位で有意に低下する。この液性免疫の経時的低下によって、Delta株を中心とする新型コロナウイルスの感染拡大(第6波)が今年の12月以降の冬場に発生する可能性を論評者らは危惧している。
第6波の発生を避けるためには、ワクチン接種後の時間経過と共に低下した液性免疫を再上昇させるためのワクチン3回目接種(Booster接種)、あるいは、Delta株を中心とするコロナ変異株抑制能力が高く効果持続期間がワクチンと同等、あるいは、それ以上に長いIgG monoclonal抗体をワクチン代替薬として考慮する必要がある.
今年の12月以降には、本邦においてもワクチン2回接種後6ヵ月以上経過した人たち(医療従事者を含む)の数が増加し、何らかの有効な施策を導入しない限り、液性免疫低下に起因するDelta株由来の第6波が必然的に発生するものと考えておかなければならない。

 

筆者も全く同じ意見です。今我々は感染者が極端に減った平穏に一息ついていますが、必ず第6波は来ます。8か月たってからと言わず、早急に3回目接種を開始すべきであると思います。

しかもインフルエンザワクチンと同時に効率よく接種すべきであると考えます。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

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