ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

ロックダウン

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令和3年8月17日、新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見の質疑応答の中で首相は、「諸外国のロックダウンについて、感染対策の決め手とはならず、結果的には各国ともワクチン接種を進めることで日常を取り戻してきているというふうに理解しています。新型コロナというこの非常事態について、今後、しっかり検証して、感染症に対するための法整備、こうしたことも含めて幅広く検討しなければならない、私はこのように思っています。」と述べ、
尾身会長は、「今、この状況で街から人が全くいなくなるような、そういう状況を今の段階で作る必要は、今のところないと思います。」

と述べています。

果たしてそうでしょうか?

中国の武漢閉鎖から始まって、米国・ヨーロッパ各国が感染急増の波が起こるたびに、国単位・都市単位でロックダウンしてきたのを、我々は知っています。

 

Social Science & Medicine
Volume 275、2021年4月、113819
オランダのCOVID-19封鎖措置は、政府への信頼と科学への信頼を高めました:差分分析

メソッド
社会科学の縦断インターネット研究(LISS)パネル(オランダのティルブルフ大学のCentERdataによって管理されている)から取得したデータを使用しました。
最終的に、5176世帯がパネルに参加しました。

結論
COVID-19パンデミックの間に2020年3月にオランダで実施された封鎖措置が、それらの起草と実施に関与する機関である科学と政府への信頼に実質的な短期的なプラスの影響を及ぼしたという経験的に厳密な証拠を提供します。
しかし、長期の封鎖措置は、失業率の上昇、経済の不確実性、孤独などを引き起こし、特に低所得のグループや教育レベルの低いグループの間へは、悪影響を与えました。
封鎖措置のマイナスの経済効果が明らかになると、経済的に脆弱なグループは最終的に信頼が低下する可能性があります。

 

政府の介入はヨーロッパ諸国でのCOVID-19の蔓延にどのように影響しましたか?
BMCパブリックヘルス

メソッド
感染者がウイルスを感染させるための1日の平均接触数である実効接触率(ECR)が、この波の間に実施された対策によってどのように変化したかを調べました。

結果
毎日のECRの変化点は、政府の介入の実施と一致していることがわかりました。検討した時間枠の終わりに、イタリア(0.29)、スペイン(0.24)、およびドイツ(0.27)で同様のECRが見つかりましたが、オランダ(0.34)、ベルギー(0.35)、および英国(0.37)では、やや高いECRが見つかりました。最高のECRはスウェーデンで見つかりました(0.45)。

結論
通常、政府が最初に講じた措置の中には、イベントの禁止と学校の閉鎖の即時の効果があるように思われました。バーやレストランをさらに閉鎖する効果は限られているようでした。ほとんどの国では、完全封鎖の影響がやや遅れており、完全封鎖後のECRは、集会禁止後のECRよりも必ずしも低いとは限りませんでした。

 

データを見ると、ポイントを絞ってのロックダウンが可能なように見えます。

 

それから新型コロナウイルス感染症の聖地、武漢でのデータです。

Global Health Research and Policy
都市の封鎖はCOVID-19の蔓延を防ぎますか?合成制御法からの新しい証拠
オープンアクセス
公開: 2021年7月1日

メソッド
中国の279の都市からの毎日のパネルデータに基づいて、私たちの研究は、武漢の人口移動の封鎖と新たに確認されたCOVID-19症例の進行との因果関係を経験的に分析するために、合成制御アプローチを適用した最初の研究です。

結果
武漢の封鎖により、モビリティの流入が約60%減少し、流出が約50%減少しました。封鎖から4日以内に、新しい症例の大幅な減少が観察されました。この期間中、新規症例の増加は約50%減少しました。しかし、この最初の期間の後、抑制効果は認識できなくなりました。封鎖後5日目に新規症例の増加で2.25倍の急増が見られ、その後急速に減少しました。

結論
都市の封鎖がウイルスの流行の拡大を封じ込め、遅らせるための効果的な短期的ツールになり得るという、緊急に必要で信頼できる因果関係の証拠を提供しました。

 

ニュージーランドではオークランドで感染者が1人出ただけで国中のロックダウンに踏み切っています。

オランダのデータのようにロックダウンは、政府への信頼がないとうまくいかないようです。その意味で菅首相の意見は正しいのかもしれません。(笑)

 

論文を色々検索してみましたが、ロックダウンが感染拡大に対して全く効果がないという論文は、一つもありません。

幸い世界中の今までの、様々なデータが検討できるのですから、経済に配慮した日本独自のロックダウンを検討してみてはいかがでしょうか。

日本や日本人の命運を左右するような大切な首相会見ですから、こういう時にこそ,

リアルタイムのファクトチェックをしてみるべきでしょう。

drhirochinn.work

ロックダウンせずにワクチン戦略だけの国は、ほぼ日本だけではないでしょうか。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

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