ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

デルタ株、水痘に匹敵する感染力

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以前、空気感染に関する記事を書かせていただきましたが、昨今のデルタ株の感染力の強さを見ると、この伝搬様式の関与をどうしても考えざるを得ません。

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/701662269f1ec6122950251b4643048af3a215e9

デルタ株、水痘に匹敵する感染力 CDCの内部資料が警告
7/30(金) 13:15配信 CNN.co.jp

この中で『 全米で感染が急拡大している新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」はより重篤な症状を引き起こし、水痘と同じくらい容易に蔓延(まんえん)するとみられる。米疾病対策センター(CDC)の内部資料から明らかになった。』

と伝えています。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/07/cdc-21.php

デルタ株、水ぼうそう並みの感染力で深刻な疾病を引き起こす=CDC内部文書
Newsweek

「米疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルスのデルタ株について、水ぼうそう並みの感染力があり、深刻な疾病を引き起こす可能性があるとの内部文書をまとめた。米紙ニューヨーク・タイムズが30日、複数の専門家の話として報じた。」

Newsweek社も同様に報じています。

 

空気感染というと我々医療者の間では、・麻しんウイルス(はしか)・結核菌・水痘ウイルス(水ぼうそう)をすぐに思い浮かべます。

その中の水痘ウイルスと同じ、つまり C D C も新型コロナウイルスの感染様式が空気感染であると認めたことになります。

 

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000806494.pdf

飲食店における感染対策チェックリストの遵守状況と
クラスター発生との関連についての調査

調査概要
2020年10月~2021年5月にクラスター(※1)の発生した12施設(和歌山県8施設、岐阜県2施設、沖縄県(宮古島)2施設)及びコントロール群(※2)19施設(すべて宮古島)に対し、有症者・接触・飛沫・エアロゾル感染対策を中心として、計18問の質問アンケート調査を実施。
※1 クラスターは、上記期間中に8人以上の感染者が生じた施設とする。
※2 コントロール群は、同期間中に感染者数2人以下の施設で、クラスターの発生した施設と規模や業務形態が同程度の施設を抽出した。

結果・考察
○ 感染対策の遵守率は、クラスターが発生した施設で低かった。(遵守率の平均44.4%※) ※ これに対し、コントロール群における感染対策の遵守率の平均は85.0%
 遵守率 60%未満:クラスター発生の12施設中9施設(75%)
 遵守率 80%以上:クラスター発生の12施設中1施設(8.3%)
○ 飲食店におけるクラスター対策として以下の対応との関連性が高いと考えられる。
 他のグループとの間にアクリル板を設置
 他のグループとの距離を1メートル以上取る
 飲食時以外のマスク着用を促す
 トイレなどに消毒設備を設置
○ その他、就業時の検温、症状がみられる際の検査、手指衛生、マスク着用による
接客、定期的な換気など、店舗スタッフ側の対応も有用な可能性が示唆される。

以上、厚労省が発表しています。

 7月14日開催の第43回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードにおいて、飲食店における国推奨の感染対策チェックリストの遵守状況とクラスター発生との関連についての調査結果が公表されました。

感染対策の遵守率はクラスター発生店で低く、個別の感染対策としては、アクリル板の設置や他グループと1m以上の距離をとること、トイレ等への消毒設備の設置のほか、就業時の検温などスタッフ側の対応もクラスター発生防止との関連性が高いと考えられたそうです。

 

もう一度クラスター防止のために必要な対策を列挙します。

・他のグループとの距離を1メートル以上とる
・他のグループとの間にアクリル板が設置する
・スタッフは就業時に体温測定と体調確認をする
・飲食時以外はマスクを着用するよう客に促す
・客が入れ替わるタイミングでテーブル等を消毒する
・スタッフは客が触れた物を扱ったあと手指衛生を行う
・スタッフは常にマスクを着用して接客する
・カラオケを提供しない
・窓やドアを開けて定期的に換気する
・スタッフに症状を認めるときは検査を受けさせている/保健所の指示に従っている/休ませている
・トイレにペーパータオルを設置する

飲食店を利用するときはこんな点に気を付けて遵守している店を選ぶべきです。

 

それでは、飲食店での感染はどれくらい発生しているのでしょう。

第45回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年7月28日)
新規陽性者数の推移等(HER-SYSデータ)

からデータを拾ってみました。

 

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飲食店は、決して多くを占めてはいません。

 

https://toyokeizai.net/articles/-/430026

飲食店だけを悪者にする日本の作戦に開いた大穴
空気感染を否定しクラスター対策になおも拘る

上 昌広 : 医療ガバナンス研究所理事長

この記事の中で、上先生は、

『 飲食関係の感染源は「大多数ではない」。世界4大医学誌の2誌がコロナ空気感染を論考。
もし、感染の主体がエアロゾルによる空気感染で、どこに感染者がいるかわからないとなれば、濃厚接触者だけを検査しても無駄で、幅広くPCR検査を実施しなければなくなる。そうなれば、彼らが作り上げてきた「濃厚接触者さえみておけば大丈夫」というシナリオが崩れてしまう。』

と述べています。

 

飲食店に対する過酷な感染対策は、間違っていると筆者も思います。

時々刻々と変遷している新型コロナウイルスに対して、日本の感染対策が追い付いていないと感じています。通勤労働者や学校の生徒などに対して、 P C R検査や精度の向上している抗原検査などを使って広く感染確認し、陽性者に対しては適宜隔離していくべきであると思います。

ある意味、今オリンピックでやっている感染対策を、できるだけ国民に対しても実施していく必要があると筆者は思います。

 

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もし今のコロナウイルスの感染経路が主に空気感染であれば、通勤電車や職場などでの感染がどんどん拡大していくでしょうし、上記の厚労省の感染場所は、自宅かそれ以外という結果になります。以前から感染経路不明の中の一定数がこの空気感染であった可能性もあります。

先の上先生の主張通り、広く P C R 検査などをして感染者をできるだけ特定し、隔離していかなくてはなりません。

ワクチンが広くいきわたるまで、真の意味でのロックダウンやテレワーク率向上の強制などにより、交通機関によるウイルスの伝搬をできるだけ制御していく必要があります。

恐らく今後の研究で実際に、空気感染の事実が明らかになっていくものと思います。

 

今熱狂しているオリンピックは、現在の市中感染急拡大の原因ではありません。

出場している選手たちは、国民へ気を使ったコメントを慎重に発しています。

人生をかけて競技しているアスリートに対して、筆者は少し応援したくなっています。

どうか悔いを残さないように、日本を代表して頑張ってほしいと思います。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

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