ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

スコットランドでの初回投与ChAdOx1およびBNT162b2COVID-19ワクチン

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前回の記事で書きましたように、現在ワクチン接種が政府からの供給不足で突然中止となっている地域があります。それが大都市圏に多くこれからオリンピックを控えかなり深刻な状況になっています。政権は、mRNAワクチンにこだわっているようですが、日本にはもう一つワクチンがあります。マスコミのネガティブ報道や勉強不足の政治家・官僚のせいでアストラゼネカ社ワクチンは、国内では使わず海外へのプレゼント品になっているかのようです。

drhirochinn.work

 

 

最近英国スコットランドでのリアルワールドのデータが出ましたのでご紹介いたします。

 

Nature Medicine
論文
オープンアクセス
公開: 2021年6月9日
スコットランドでの初回投与ChAdOx1およびBNT162b2COVID-19ワクチンと血小板減少症、血小板減少症および出血性イベント

 

方法
2020年12月8日から2021年4月14日までの間に、スコットランドで253万人(18歳以上の成人人口の57.5%)がCOVID-19ワクチンの初回接種を受けました。これらのうち、171万人がChAdOx1ワクチンを接種され、82万人がBNT162b2ワクチンを接種され、1万人未満がmRNA-1273ワクチンを接種しました。
結果
血小板減少症のイベント
ChAdOx1ワクチン接種後にイベントのリスクが増加したという証拠がありました,
100,000回の投与あたり1.33(95%CI、-0.34–2.97)でした。
ワクチン接種後のどの期間においても、BNT162b2ワクチンでは血小板減少症のリスクの増加は見られませんでした。

ITP
【 ITPとは「特発性血小板減少性紫斑病とくはつせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう」のことです。
はっきりとした原因がわからず(特発性といいます) 、血小板の数が10万/μL(マイクロリットル)以下に減少する病気です。】

アストラゼネカ社製ChAdOx1を接種後の特発性血小板減少性紫斑病の推定発症率は、100万回当たり約11例と計算されました。
この発症率は、B型肝炎やインフルエンザ、麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチンで報告されている100万回あたり10~30例という報告と、ほぼ同等と考えられます。
BNT162b2ワクチンとITPの間に正の関連は見られませんでした。

 動脈血栓塞栓性イベント
アストラゼネカ社ワクチン後に若干のリスク増加(100万人当たり9~13人)。
BNT162b2ワクチン接種に関連する動脈血栓塞栓性イベントのリスクの増加はありませんでした。

出血性イベント
100万人当たり8~11人のリスク増加。
BNT162b2ワクチン接種に関連する出血性イベントのリスクの増加はありませんでした。

 

ワクチン接種後に血小板の減少やそれに関連する血栓・塞栓、出血性イベントを発症した人は、心疾患、糖尿病、慢性腎臓病などの基礎疾患を、少なくとも一つ以上有していたことも明らかになりました。また、高齢者に多い傾向も認められました(年齢中央値が発症群69歳、非発症群54歳、P=0.01)。ただし研究者らは、COVID-19に罹患した場合にも血栓や塞栓のイベントリスクが上昇し、ChAdOx1接種後のリスク増加はCOVID-19罹患によるリスク増加よりも小さいことを指摘しています。
BNT162b2と血小板減少症、血小板塞栓症および出血性イベントとの間に正の関連は見られませんでした。

 

ChAdOx1接種後に特発性血小板減少性紫斑病と、凝固および出血性イベントのわずかな増加が認められたのは事実ですが、ワクチンの持つ明確なメリットと、COVID-19に罹患した場合に凝固や出血性のイベントが生じる潜在的なリスクとの双方を考慮する必要があります。 

 

 以前のデータやこの記事のデータなどを参考にワクチン供給が滞っている日本で限定的に、アストラゼネカ社製ワクチンを使うことも一案ではないでしょうか。

 自国内で使わないようなワクチンを他国に恩着せがましくプレゼントしたといわれないためにも。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

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