ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

いつでもどこでも

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https://news.yahoo.co.jp/articles/0c87e3f107c1d68bb87a668b427841c621eb031d 

「 厚生労働省は4月23日、新型コロナウイルスワクチンの接種で、医師や看護師に限られていたワクチン注射を歯科医師にも容認することを決めた。
医師法上の特例として、(1)歯科医師の協力なしに集団接種が困難(2)歯科医師が筋肉注射の経験があるか、必要な研修を受けている(3)接種者の同意を得ている―との条件を満たせば可能と判断した。」

と報道されました。

 

歯科医師もワクチン接種可能な特例を厚労省が発出したと大きく報道されました。

国がお願いしておきながら形は許可するという形式をとっています。

そして実際の詳細なことは、地方自治体に丸投げです。自分たちは通達1枚で何も汗はかかずに。当然その時の報酬とかコロナに感染した時の補償など具体的なことは全て自治体にやらせるわけです。

これに関しては、接種を受ける国民もよく知っておかなければいけません。

誰でもアクセスできますが、一応通達文をご紹介します。

 

 

https://www.jda.or.jp/jda/release/cimg/2021/20210427_coronavirus_wakuchin.pdf

事 務 連 絡
令和3年4月 26 日
公益社団法人 日本歯科医師会

御中

 

都 道 府 県
各 市 長 村 衛生主管部(局) 
特 別 区

御中 

 

厚 生 労 働 省 医 政 局 医 事 課
厚生労働省医政局歯科保健課
厚生労働省健康局予防接種室

 

新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種のための
筋肉内注射の歯科医師による実施について

 

予防接種の実施主体である自治体の長が、看護師等の確保に取り組んだ上で、それでも必要な看護師等の確保が困難と判断し、地域の医師会等の関係者とも合意の上で、地域の歯科医師会等に協力を要請する必要があること。

特例的に歯科医師がワクチン接種を行うのは、集団接種のための特設会場に限り、歯科
医師がワクチン接種のための筋肉内注射を行うに当たっては、

1)特設会場にいる医師の適切な関与の下で行う必要があること。

2)予診やアナフィラキシー時の症状が発生した場合の対応については、特設会場にいる医師が行うこと。

3)被接種者への同意の取得方法として、書面による同意、口頭での説明による同意等。

 研修内容:以下の内容を含むものとする。
① 新型コロナウイルス感染症に係るワクチンに関する基礎知識(副反応に関する内容
も含む。)
② 新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの接種に必要な解剖学の基礎知識
③ 新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種の実際(接種時の注意点を含む)
④ 新型コロナウイルス感染症に係るワクチンのアナフィラキシーとその対応 等

 

など明記されています。

 

歯科医師の方々には、大変御迷惑な話でしょう。医師の監督下で仕事をしなければならないなんて、私ならできないですね。

それにしても自治体の関係者の方たちの仕事量の多さには、今回に関しては頭が下がります。

歯科医師の方々は、集団接種の特設会場においてのみ、医師の監督下、自分は歯科医師であるということを被接種者に口頭か書面で同意を取ったうえで、今回のワクチン接種に限り⦅ほかの場面でワクチン接種すると医師法(昭和 23 年法律第 201 号)第 17 条に違反する⦆認められるということです。

もし感染したら自身の健康上のリスクとともに、歯科医院の休業や廃院のリスクも負うことを覚悟しなければなりません。

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/dd9752d0305f5842dbed8bb4300dc6477a7a6936

「 アメリカではドラッグストアで薬学生による接種も…」の記事の中で、内科医・NY州マウントサイナイ医大病院の山田悠史氏は、アメリカの接種がスピーディーに進行している理由について「かなり州政府に任されているということも大きいと思う。ドラッグストアなどでもトレーニングを受けた薬剤師や薬学生による接種環境が行われていることもある。」

と報じています。

皆さんはどうお考えになりますでしょうか?

以前にも書かせていただいたように筆者は過去に記憶しているだけで10例以上のアナフィラキシーを経験しています。出現が早期であるほど激しい反応が起きます。薬局やドラッグストアで起きたらどうしますか?その時薬剤師や学生がちゃんと対応できるでしょうか?

我々の専門性とは、知識と経験に裏打ちされているものです。仮に頭でわかっていたとしても、研修を受けていたとしても、実際に遭遇したらおろおろするだけでしょう。アナフィラキシーなのか血管迷走神経反射なのかすらわからないと思います。

我々は、実際に起きることを想定してアナフィラキシー用の薬剤や気管内挿管もできるように器具や酸素も準備しています。そういうことが普通の薬局やドラッグストアでできるでしょうか?

発生頻度が少ないといっても海外と違って日本では、1万件に1件程度出現する可能性があります。(筆者の記事を読み返していただければお分かりになりますが)

繰り返しますが、店にいるうちに発生したらその分重篤です。アメリカのデータではおおむね入院、 I C U 管理(気管内挿管も)が必要になります。

ワクチン接種の担い手を広げることが改革だと思っている知識人やマスコミ関係者が多くいますが、実際の医療を全く知らない人たちの発言です。もし知ってて言ってるのなら、何においてもワクチン接種を優先して個々の被接種者の生命・健康を無視する意見でしょう。

drhirochinn.work

我々医師は、人の生死に直接かかわる経験を多く積んでいるからか、自分の利益より人の健康を優先する習性があります。ですから誰に対しても、患者さんの健康に関しては自分の意見を臆せず言えます。

残念ながら今後大都市圏で一般の方々への接種は、薬局やドラッグストアなど医療機関以外でも行われると思います。できるだけ皆さんは医療機関で接種を受けてください。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

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