ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

B .1 .1 .7 (VOC 202012/01)

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1)

The Lancet Public Health

記事| 第6巻、第5号、E335-E345、2021年5月1日
SARS-CoV-2変異体B.1.1.7に関連する症状、再感染、および伝染性の変化:生態学的研究

オープンアクセス公開日:2021年4月12日DOI:https ://doi.org/10.1016/S2468-2667(21)00055-4


バックグラウンド
SARS-CoV-2バリアントB.1.1.7は、2020年12月に英国で最初に同定されました。この変異体による感染の割合の増加が、症状や病気の経過再感染率、または伝染性の違いに関連しているかどうかを調査することを目的としました。

メソッド
症状の種類と期間に関するデータは、2020年9月28日から12月27日までの間にCOVID-19の陽性検査を報告したCOVID症状研究アプリのユーザーからの縦断的報告から得られました.

このデータセットから、再感染の可能性の頻度も推定しました。

英国に住む4 327245人の成人の人口からの症状レポートとテスト結果を提供する縦断的データセットが、研究されました。

結果

B.1.1.7変異体による感染の割合が増加しても、症状の総数、無症候性感染、自己申告による通院、および長期にわたる長い症状期間の結果に変化がないことを示唆しました。
4週間にわたって報告された症状の数との間や、入院、症状の持続期間の長さ、または無症候性の症例の割合に関連性の証拠はありませんでした。

討論
要約すると、SARS-CoV-2 B.1.1.7変異体による感染の割合が、英国のCOVID-19症状、疾患経過、再感染率、および伝染性に及ぼす影響を調べたところ、従来型と比べそれらに差異は見られませんでした。またはそれらの期間、再感染はまれであり(アプリユーザーの0・7%)、B.1.1.7バリアントの有病率に関連する再感染率の増加の証拠はありませんでした。 B.1.1.7変異に伴って、R(実効再生産数)の増加が見出されましたが、B.1.1.7変異体による感染の非常に高い(> 80%)地域であっても、ロックダウンの際に1を下回りました。

 

drhirochinn.work

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今回の論文は、B.1 1 7変異株 の英国での、大規模なコホート研究であり、その分信頼性も高いかと思います。

しかし変異株の危険性の記事では、感染率に加えて、重症化率、致死率も増加していたはずです。

サンプルサイズの違いも影響しているのかもしれません。

 

2)

研究論文
英国におけるSARS-CoV-2系統B.1.1.7の推定伝達率と影響
Science 09 Apr 2021:
Vol. 372, Issue 6538, eabg3055
DOI: 10.1126/science.abg3055

 

この論文は、英国全土からの150,000を超えるシーケンスされたSARS-CoV-2サンプルを含むCOG-UKデータセットを分析して、仮説を立てて推論しています。

仮説1(感染率の増加)
仮説2(感染期間が長い)
仮説3(子供の感受性の増加)

仮説3は確実ではありませんが、1と2は、可能性が高いとのことです。

 

2つの論文や今までの論文を合わせて考えてみると共通するのは感染率の明らかな増加です。感染率が増加すれば重症者数、死亡者数は、当然増えていきます。その結果医療崩壊につながっていきます。気になるのは、子供の感受性が増加する可能性と感染期間の長さです。子供の感受性が増加しているのであれば、学校も閉鎖する必要が出てくるでしょうし、感染期間がより長いのであれば軽症者の自粛期間は10日では足りません。

 より感染性が増加し子供も感染しやすくなっていて、今の緊急事態宣言で抑えが効かないのであれば、速やかに日本もロックダウンを法整備の上実行すべきです。

そして今現在全く減っていない通勤を一旦止めて、学校も閉鎖すべきです。

大阪はすでに医療崩壊を起こしていますし、首都圏も中等症が入院できず、自宅療養中の死亡が増えてきています。これも医療崩壊です。

B.1.1.7 がほぼ国中に蔓延している英国をお手本にしながら、日本独自のデータも取って、有効と考えられる対策を直ちにとっていくべきでしょう。 

新しい医療施策は法律とセットです。それは政治家にしかできないことです。これ以上無用な死者が出ないように祈るばかりです。

 

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