ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

ワクチン投与後の抗体レベルー高齢者でー

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一番のコロナ弱者ともいえる高齢者に対する感染やワクチンの研究が驚くほど少ないことに改めて驚いています。

これから始まる高齢者への本格的なワクチン接種に際して、ワクチンに関しての高齢者の特質の認識は、どうしても必要と思われます。

来るべき、筆者の地元での、高齢者へのワクチン接種に備え、周辺の知識を得る目的で色々調べております。

数少ない論文の中の一つをご紹介します。

 

April 15, 2021
Spike Antibody Levels of Nursing Home Residents With or Without Prior COVID-19 3 Weeks After a Single BNT162b2 Vaccine Dose
Hubert Blain, MD, PhD1; Edouard Tuaillon, MD, PhD2; Lucie Gamon3; et alAmandine Pisoni2; Stephanie Miot, MD, PhD1; Marie-Christine Picot, MD, PhD3; Jean Bousquet, MD, PhD4
Author Affiliations Article Information
JAMA. Published online April 15, 2021. doi:10.1001/jama.2021.6042

事前のCOVID-19の有無にかかわらず、BNT162b2ワクチンの単回投与の3週間後のナーシングホーム居住者のスパイク抗体レベル

 

メソッド
2020年3月から6月の間​​に、COVID-19の発生に直面しているフランスのモンペリエのナーシングホームの居住者を調査しました。
居住者がCOVID-19を開発するとすぐに、欧州老人医学会からの検査勧告に従い、新しい症例がなくなるまで、すべての居住者が鼻咽頭スワブで逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して繰り返し検査されました。
症状発生の終了から6週間後、すべての居住者は、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド(N)タンパク質に対するIgG抗体のレベルについて血液検査を受けました。32021年1月に6つのナーシングホームのすべての居住者に最初のワクチン投与が提供されました。3週間後、すべての居住者は、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質およびNタンパク質に対するIgG抗体レベルを定量的に評価するために血液検査を受けました。SARS-CoV-2受容体結合ドメインに対するIgG抗体のレベルは、SARS-CoV-2 IgG II Quantアッセイ(Abbott Diagnostics)を使用して定量化されました。

 

結果
102人の居住者のうち、60人は以前にSARS-CoV-2感染(COVID-19)がなく、36人はRT-PCRの結果が陽性で、2020年6月にSARS-CoV-2 Nタンパク質IgGが血清陽性であり、6人はRT-PCRの結果が陽性であるか、SARS-CoV-2Nタンパク質IgGに対して血清陽性でした。RT-PCRの結果が陽性で、2020年6月にSARS-CoV-2 Nタンパク質IgGが血清陽性であった36人の居住者のうち、26人が2021年1月から2月に血清陽性のままでした。(72.2%)。

以前のCOVID-19のある36人の居住者全員が1回のワクチン投与後にS-タンパク質IgGに対して血清陽性であったのに対し、以前のCOVID-19発症歴のない60人の居住者のうちでは、29人(49.2%)でした。

以前にCOVID-19に感染した居住者では、Sタンパク質IgGの中央値は40 000 AU / mL以上(四分位範囲[IQR]、22801-≥40000AU/ mL)でしたが、発症歴のない人は、48.0 AU / mL(IQR、14.0)でした。 

2020年4月にRT-PCRの結果が陽性であった1人の居住者は、2020年6月と2021年1月にNタンパク質IgGの血清陰性を検査で確認しましたが、この居住者は、強力なSタンパク質IgGレベル(≥40000AU/ mL)を持っていました。

5人の居住者は2020年6月にN-タンパク質IgGに対して血清陽性であり、2020年4月にRT-PCRの陰性結果を繰り返しましたが、これらの居住者5人全員が高レベルのS-タンパク質IgG抗体(中央値、≥40000 AU / mL)を持っていました。

 

討論
この予備研究は、RT-PCRの結果に基づいて以前にCOVID-19と診断されたナーシングホームの居住者で高レベルのSタンパク質IgG抗体を取得するには、BNT162b2ワクチンの単回投与で十分である可能性があることを示唆しています。これは、以前にCOVID-19(SARS-CoV-2 IgGを使用して診断された)の医療従事者の間で報告されたスパイク三量体および中和抗体力価に対するIgGに基づく結果と一致しています。
2回目のワクチン投与の直前にSタンパク質IgG抗体レベルを測定することは、感染歴が不明な個人に2回目の投与が必要かどうかを判断するのに役立つ可能性があります。

 

以上が論文の要旨です。

サンプルサイズがもっと大きく、その後の実際の感染・再感染に関してのコホート研究データがあれば、より良い研究になるものと思われます。

 

たとえ高齢者であってもファイザー社製ワクチンを一回打つことで、かなりの抗体レベルが得られる可能性があるようです。

 

このことはワクチン接種がかなり遅れて、アフリカ諸国並みといわれる日本にあって、広くまず一回ワクチンを打つという選択肢を、もう一回検討する必要が生じる気がしてなりません。(政府は、いち早くこの可能性を否定していますが)

また、ワクチンの自国内生産ももっと追求していくべきと思います。

幸い日本が選んだファイザー社製ワクチンは、今あるワクチンの中で一番優秀であると思われます。

どうにかして早急に国民に接種を完了できるよう政府、官僚、国民が団結して取り組む必要があると思います。

一人でも多くコロナで亡くなる人を防ぐために。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

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