今新型コロナウイルス感染症で注目されているのは、何といってもその変異株だと思います。
今回は、この変異株について少し調べてみました。
新型コロナウイルスの遺伝子は3万個の文字の列(塩基配列)でできており、文字の並びに従い、あるべき位置にあるべき種類のアミノ酸が作られ、複数のアミノ酸がつながってタンパク質ができ、ウイルスを形作ります。しかしコピーを繰り返す中で、設計図の文字を写し間違えることがあります。
新型コロナウイルスにはスパイクという、突起のようなものがあり、これがヒトの細胞にまずくっつき、ウイルスが細胞に入り込むのが感染です。
このスパイクを構成するスパイクタンパク質のうち、ヒトの細胞表面にある受容体と呼ばれるタンパク質と結合する重要な部位内に変異が起きたものが変異株です。
変異株の分類方法を、わかりやすいように、初めて検出された国で分ける方法と変異部で分ける方法があります。
変異部で分けると
1)「N501Y」変異
去年12月、イギリスで感染者急増の中、「N501Y」変異がある新型コロナウイルスが報告されました。感染のしやすさ(伝播性)が強いとされています。
英国で確認された変異株(VOC-202012/01),南アフリカで確認された変異株(501Y.V2)、ブラジルで確認された変異株(501Y.V3),フィリピンで確認された変異株がこの変異を有しています。 英国や南アフリカで確認された変異株については、重症化しやすい可能性も指摘されています。
2)「E484K」変異
この変異はイギリス型にはなく、ブラジル型、南ア型、フィリピン型では、スパイクタンパク質で起きた複数の変異に「N501Y」と「E484K」変異が含まれています。
「E484Kの変異がある変異株」は、従来株よりも、免疫やワクチンの効果を低下させる可能性(*1)が指摘されています。
南アフリカで確認された変異株(501Y.V2)、ブラジルで確認された変異株(501Y.V3)、フィリピンで確認された変異株がこの変異を有しています。
※ 上記のほかに「N501Yの変異はないがE484Kの変異がある変異株」を、3/25時点、我が国では、1,161例(国内1,156件、検疫5件)確認しています。
*1 この変異のみでワクチンが無効化されるものではなく、ファイザー社のワクチンの場合は、承認審査において、モデルウイルスを用いた非臨床試験を通じ、種々の変異株にも一定の有効性が期待できるが、今後も変異を注視し、引き続き検討が必要とされています。
次に最初に検出した国で分類すると、
A)英国型
N501Y変異有。
B)南アフリカ型
N501Y変異とE484K変異有り
C) ブラジル型
N501Y変異とE484K変異有り
A)英国型は感染性・伝搬性が5~7割増加し二次感染率も25~40%増加する解析結果があります。入院・死亡リスクも上昇する可能性が高いです。
モデルナ社製ワクチン接種後血清で中和可能。
ファイザー社製ワクチンやアストラゼネカ社製ワクチン接種後血清で非変異株に比べて、変異株に対する中和活性がin vitroで2~3倍程度低下する可能性があります。
B) 南アフリカ型は、ファイザー社製ワクチンやアストラゼネカ社製ワクチン接種後血清で中和能が8~9倍程度低下し、アストラゼネカ社製ワクチン接種後の有効性は示されなかったということです。しかし2021年4月1日、南アフリカのワクチン試験の最新情報によると、ファイザー社製ワクチンは、これまでのところ100%有効である(つまり、ワクチン接種を受けた参加者は症例を見なかった)ということです。
C)ブラジル型は、感染性・伝搬性増加が懸念される変異で、ほかのウイルスに比べて1.4~2.2倍伝搬しやすいという解析結果があります。ファイザー社製ワクチンやアストラゼネカ社製ワクチン接種後血清で変異株に対する中和能が2~3倍低下するというデータがあります。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/10280-covid19-41.html
いま日本が接種開始しているファイザー社製ワクチンは、今のところ現在の国内にいる変異株に対して、有効性は確保されているようです。
話は変わりますが、英国型、南アフリカ型、ブラジル型というなら、武漢型というべきでしょう。
いつも最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。