ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

カフェインと運動、健康

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今回は、カフェインと運動に関する研究のご紹介です。

Wikipediaによりますと、
「カフェインは、アルカロイドの1種であり、プリン環を持ったキサンチンと類似した構造を持った有機化合物の1つとしても知られる。ヒトなどに対して興奮作用を持ち、世界で最も広く使われている精神刺激薬である。カフェインは、アデノシン受容体に拮抗することによって覚醒作用、解熱鎮痛作用、強心作用、利尿作用を示す。

カフェインは脂肪細胞において中性脂肪の分解を促進し、血中へ脂肪酸やグリセロールを遊離させ易くする作用も有する。運動時などには、こうして脂肪細胞から動員された脂肪酸などもエネルギーとして使用する。ただし、カフェインの脂肪細胞での中性脂肪の分解促進作用は、血中のインスリンの濃度が高いと阻害される。」

と書かれています。

 

Caffeine increases maximal fat oxidation during a graded exercise test: is there a diurnal variation?
Mauricio Ramírez-Maldonado, Lucas Jurado-Fasoli, Juan del Coso, Jonatan R. Ruiz & Francisco J. Amaro-Gahete
Journal of the International Society of Sports Nutrition volume 18, Article number: 5 (2021)
カフェインは段階的な運動テスト中に最大の脂肪酸化を増加させます:日内変動はありますか?

という論文が出ました。

 

メソッド
32±7歳の15人の活動的な男性で、
(i)は18.5〜28キロ/ Mのボディマスインデックス有する(ii)非喫煙者、(iii)運動によって悪化する可能性のある病気に苦しんでいない(iv)薬や薬を服用していない(v)ナイーブなカフェイン消費者(<50 mg /日)、(vi)持久力トレーニングの経験がある(つまり、3回以上のトレーニングセッション/週[3.6±0.2セッション/週]を含む少なくとも2年間の持久力トレーニングの自己報告)、(vii)カフェインアレルギーがない、および( viii)前月に筋骨格系の損傷は発生していない。

人たちが対照です。

 最大脂肪酸化率(MFO)と最大酸素摂取量(VO 2max)を間接熱量測定法で測定し、MFOを誘発した運動の強度(Fat max)を計算しました。

 

結果
段階的運動テスト30分前のカフェイン摂取は、時間帯に関係なく、MFO、Fat max、VO2maxを増加させました。また、すべて午前よりも午後のほうが有意に高かったとのこと。
カフェインが午前中の段階的な運動中に全身の脂肪の酸化を増加させ、午後にカフェインなしで見られる値と同様の値になることを示唆しています。全体として、これらの結果は、急性カフェイン摂取と午後の適度な強度での運動の組み合わせが、有酸素運動中に全身の脂肪の酸化を増加させようとしている個人にとって最良のシナリオを提供することを示唆するとしています。
また研究者らは、「これらの結果は、朝のトレーニングまたは競技中のエルゴジェニックエイドとしてのカフェインの使用をサポートしています。急性カフェイン摂取と午後の適度な強度での運動の組み合わせは、継続的な有酸素運動中に利用される脂肪の量を増やしたい個人にとって最良のシナリオのようです。」と結論しています。

 

もう一つの研究です。

Coffee, Caffeine, and HealthCoffee, Caffeine, and Health

The New England journal of medicine. 2020 07 23;383(4);369-378. doi: 10.1056/NEJMra1816604.Author Rob M van Dam, Frank B Hu, Walter C Willett

コーヒー、カフェイン、そして健康

 

van Dam氏によると、カフェイン入りコーヒーによる疾患リスクの増大は一般的には認められず、さまざまな疾患のリスク低下との関連が見られ、また「適量」のカフェインはほとんどの人にとって安全であるといいます。ただし、適量を超えて摂取すると、眠れなくなったりイライラしやすくなったりすることがあり、その量には個人差があると述べています。
数々の研究から、カフェイン入りコーヒーは高血圧の発症や悪化のリスクを増大させることはなく、心疾患のほか、2型糖尿病、一部のがん、パーキンソン病、肝疾患および胆石などのリスクを低下させる可能性が示されています。ただし、それらの因果関係は不明であり、疾患の予防目的で飲むべきでないとも述べています。
しかしエナジードリンクは例外で、そのカフェイン量はコーヒー1杯よりも多く、「過剰に摂取すると血圧上昇や動悸の原因となることがあると」同氏は注意を促しています。

又、厚労省のホームページでは、

カフェインを過剰に摂取した場合には、中枢神経系の刺激によるめまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気等の健康被害をもたらすことがあります。

 このため、食品からのカフェインの摂取に関しては、国際機関などにおいて注意喚起等がなされています。例えば、世界保健機関(WHO)は、2001年にカフェインの胎児への影響はまだ確定はしていないとしつつも、お茶、ココア、コーラタイプの飲料はほぼ同程度のカフェインを含んでおり、またコーヒーはその約2倍のカフェインを含んでいることから、妊婦に対し、コーヒーを1日3から4杯までにすることを呼びかけています。 また、英国食品基準庁(FSA)では、2008年に妊婦がカフェインを取り過ぎることにより、出生時が低体重となり、将来の健康リスクが高くなる可能性があるとして、妊娠した女性に対して、1日当たりのカフェイン摂取量を、WHOよりも厳しい200mg(コーヒーをマグカップで2杯程度)に制限するよう求めています。
同様に、カナダ保健省(HC)においても、2010年に1日あたりのカフェイン摂取量として、健康な成人で400 mg(コーヒーをマグカップで約3杯)まで、カフェインの影響がより大きい妊婦や授乳中、あるいは妊娠を予定している女性は300mg(コーヒーをマグカップで約2杯)までとされています。 

 なお、カフェインを一生涯摂取し続けたとしても、健康に悪影響が生じないと推定される一日当たりの摂取許容量(ADI:Acceptable Daily Intake)については、個人差が大きいことなどから、日本においても、国際的にも設定されていません。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html

 

まとめますと、カフェインは、個人にとっての適量を 個人の責任で接種してください。しかし効果的に接種すると健康にはよいですよ。

ということだと思います。ちなみに筆者は、カフェインに敏感のようで 健康に注意しながらコーヒーやお茶をいただいております。

 

本日も最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。 

 

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