高齢者へのビタミンD補給、オメガ3脂肪酸補給、または筋力トレーニング運動プログラムの効果

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November 10, 2020
Effect of Vitamin D Supplementation, Omega-3 Fatty Acid Supplementation, or a Strength-Training Exercise Program on Clinical Outcomes in Older Adults
The DO-HEALTH Randomized Clinical Trial
Heike A. Bischoff-Ferrari, MD, DrPH1,2,3; Bruno Vellas, MD, PhD4,5; René Rizzoli, MD6; et alReto W. Kressig, MD7; José A. P. da Silva, MD, PhD8,9; Michael Blauth, MD10; David T. Felson, MD, MPH11,12; Eugene V. McCloskey, MD13,14; Bernhard Watzl, PhD15; Lorenz C. Hofbauer, MD16,17; Dieter Felsenberg, MD, PhD18; Walter C. Willett, MD19,20; Bess Dawson-Hughes, MD21; JoAnn E. Manson, MD, DrPH22; Uwe Siebert, MD, MPH23,24,25; Robert Theiler, MD2; Hannes B. Staehelin, MD26; Caroline de Godoi Rezende Costa Molino, PhD1; Patricia O. Chocano-Bedoya, MD, PhD1; Lauren A. Abderhalden, PhD1; Andreas Egli, MD1; John A. Kanis, MD27,28; Endel J. Orav, PhD29; for the DO-HEALTH Research Group
Author Affiliations
JAMA. 2020;324(18):1855-1868. doi:10.1001/jama.2020.16909

高齢者の臨床転帰に対するビタミンD補給、オメガ3脂肪酸補給、または筋力トレーニング運動プログラムの効果：DO-HEALTH無作為化臨床試験。

論文の内容をご紹介します。

なおオメガ3脂肪酸は、体内のさまざまな機能において重要な多価不飽和脂肪酸です。オメガ3脂肪酸であるEPAとDHAは、サケ、マグロ、マスなど脂の多い魚や、カニ、ムール貝、カキなどの貝類に含まれています。アブラナ油や大豆油といった一部の植物油などの他の食品には、ALA（アルファリノレン酸）という別の種類のオメガ3脂肪酸が含まれます。また、オメガ3脂肪酸はサプリメント（栄養補助食品）でも利用することができ、EPAやDHAを含有する魚油、ALAを含有する亜麻仁油などがあります。

研究グループは、ビタミンD3、オメガ3、筋力トレーニングの運動プログラムについて、単独または複合的介入が、高齢者における6つの健康アウトカムを改善するかを検討しました。

70歳以上で登録前5年間に重大な健康イベントを有しておらず、十分な活動性があり認知機能が良好な高齢者2,157例を対象に、二重盲検プラセボ対照2×2×2要因無作為化試験を実施しました。

被験者は無作為に、次の8群のうちの1つに割り付けられ3年間にわたり介入を受けました。

2,000 IU/日のビタミンD3投与・1g/日のオメガ3投与・筋力トレーニングの運動プログラム実施群（264例）、ビタミンD3・オメガ3投与群（265例）、ビタミンD3投与・筋トレ実施群（275例）、ビタミンD3投与のみ群（272例）、オメガ3投与・筋トレ実施群（275例）、オメガ3投与のみ群（269例）、筋トレ実施のみ群（267例）、プラセボ群（270例）です。

主要アウトカムは6つで、3年間にわたる収縮期・拡張期血圧（BP）の変化、Short Physical Performance Battery（SPPB）、Montreal Cognitive Assessment（MoCA）、非脊椎骨折および感染症罹患率（IR）です。6つの主要エンドポイントを複合比較しました。

Short Physical Performance Batteryは、立位バランス，歩行，立ち座り動作の 3 課題から成るパフォーマンステストです。各課題の達成度を 0～4 点で採点し，合計点を指標とします（12 点満点）。施行時間は 5 分程度と簡便であり，国際的にも広く用いられています。

モントリオール認知評価（MoCA）は、軽度認知障害（MCI）を検出するために開発された認知スクリーニング機器です。これは、記憶、言語、実行機能、視空間スキル、計算、抽象化、注意、集中力、方向性など、複数の認知領域を評価する簡単な10分間の紙と鉛筆のテストです。

全体的に、3年間の個別の介入または複合介入について、6つの主要エンドポイントに対する統計学的に有意なベネフィットは認められなかったということです。

これは、ある意味大変な論文です。我々が常識的に有効と思っていたことが、そうではなかったと言っているのです。

対象者がビタミンD、ω-3脂肪酸欠乏、運動不足が背景にあるか否かで結果が大きく左右されますし、対象者がいわゆる高齢健常者である場合、欠乏状態は相対的に軽いと考えられます。

しかしながらサンプルサイズも2157人で、常識を疑ってみるのが科学者であると思いますので、今後の論文を待つ必要がありそうです。こういう研究は、試験のデザインがすごく大切のようです。

ただ運動に対しては、整形外科医である筆者の立場的には、ちょっと認めがたいですし、今までの研究の結果にも矛盾します。