ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

妊娠とCOVID-19、ワクチン

 

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つきましては、COVID-19 と妊娠に関して、さらにはワクチンとの関係で現在分かっていることを、少し調べさせていただきました。

 

まず下記の論文をご覧ください。

 

February 24, 2021
Pregnant People’s Paradox—Excluded From Vaccine Trials Despite Having a Higher Risk of COVID-19 Complications
Rita Rubin, MA
JAMA. Published online February 24, 2021. doi:10.1001/jama.2021.2264

2021年2月 24日

妊娠中の人々のパラドックス—COVID-19合併症のリスクが高いにもかかわらずワクチン試験から除外
リタ・ルビン、マサチューセッツ州
JAMA。2021年2月24日にオンラインで公開されました。doi:10.1001 / jama.2021.2264

 

すべてのCOVID-19ワクチン試験は、事実上すべての臨床試験と同様に、妊娠中および授乳中の個人を参加から除外しています。(ただし、ラットを対象としたModernaワクチンを使用した発生毒性および生殖毒性の研究では、気になるシグナルは明らかにされていません。)

著者、Kristina Adams Waldorf、MDは最近、妊娠していない人よりも妊娠しているコロナウイルス病2019(COVID-19)の人の入院と死亡のリスクが高いことを発見し、共同執筆しました。

その妊婦とコロナの入院、死亡のリスクに対する研究は、下記の論文です。

Title: Disease Severity, Pregnancy Outcomes and Maternal Deaths among Pregnant Patients with SARS-CoV-2 Infection in Washington State
この論文の主な内容は以下の通りです。

1)妊娠患者240名のうち,ワシントン州でSARS-CoV-2感染者の11人に1人が重症または重症化。10人に1人がCOVID-19で入院し、80人に1人が死亡した。

2) COVID-19-の同年齢の成人と比較して、入院率が3.5倍高かった。

3)呼吸器疾患で入院した妊娠中の患者の中で、喘息、高血圧、2型糖尿病などの併存疾患や基礎疾患を持っている患者が多かった。

4)妊産婦死亡3名(1.3%)はCOVID-19によるもので、妊産婦死亡率は1,250/100,000妊娠であった。

5)早産は重症の女性で有意に高く、COVID-19から回復した女性よりも分娩時のCOVID-19の方が多かった。

結論:妊娠中の COVID-19 入院率と死亡率は、ワシントン州の同程度の年齢の成人と比較して有意に高く、このデータによると、妊娠中の患者は重症または重症のリスクがあり妊娠していない成人と比較して死亡率、早産ともに高率でした。

 

 妊娠中の人が非妊娠中の人よりもCOVID-19合併症を経験する可能性が高いという研究が増えています。

 

それでは、妊婦とワクチン接種に関してはどうでしょう。


本年1月中に、アメリカの医療および公衆衛生グループは、妊娠中の個人にCOVID-19の予防接種を行うべきかどうかについての一連の声明を発表しました。

1月7日:米国疾病予防管理センター(CDC)は、妊娠中の人々のためのCOVID-19ワクチン接種ガイドラインを更新しました。「[メッセンジャー] RNA [ファイザー-BioNTechおよびModerna]ワクチンがどのように機能するかに基づいて、専門家は、妊娠中の人々に特定のリスクをもたらす可能性は低いと考えています」とアップデートの著者は書いています。ただし、この集団ではワクチンが研究されていないため、妊娠中の個人とその胎児に対する実際のリスクは不明です。

CDCによると、結論として、ワクチン接種は「妊娠中の人々にとって個人的な選択である」と言っています。

 

1月8日:ファイザー-BioNTechワクチンに関する勧告で、世界保健機関(WHO)は、医療従事者や併存疾患のある人の場合のように、ワクチン接種の利点が潜在的なリスクを上回らない限り、妊婦へののワクチン接種を、差し控えることを推奨しました。

 

最近の意見記事によりますと、ワクチン接種の最優先グループのメンバーである30万人もの医療従事者が妊娠しています。さらに、数十人の第3相ワクチン試験参加者は、注射を受けたときに妊娠していることを知りませんでした。そのため、COVID-19ワクチンを接種した妊婦に関する情報を収集するための複数の取り組みが、急いで進行中とのことです。

 

まとめますと、C D C も W H O も、妊娠中の人はCOVID-19による重篤な病気のリスクが高くなりますが、妊娠中の人に対するCOVID-19ワクチンの安全性に関するデータは限られている為に、予防接種を受けるかどうかは、妊娠している人々にとって個人的な選択であると現時点では説明しています。

妊娠母体が、明らかにリスクとなる合併症を持っていなければ、現時点では、ワクチン接種は、見合わせるべきだろうというのが、一般論であると思います。

 

これに関しては、これからどんどん、最新のデータが出てくるものと思いますので、重大な関心を持ってみていこうと思います。

  

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