ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

C o v i d -19 に関するいくつかの疑問

先般千葉県医師会主催で、県民公開講座が開かれました。時節柄 Web 開催として行われ、お二人の講師が講演されましたが、大変勉強になりました。

以前から持っておりました私の疑問も概ね晴れたように思います。今回は以下の疑問に対して、自分の勉強も兼ねて書かせていただきます。

www.youtube.com

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 日本の P C R 検査数は少ないか?

まず初めに、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)のPCR検査は、ウイルスの遺伝子を増幅して検出しますが、

このPCR検査の感度(感染者が正しく感染ありと判定される率)は約70%。

特異度(非感染者が正しく感染なしと判定される率)は99%です。

この感度・特異度・集団の感染率がPCR検査結果の判断を大きく左右してきます。

感染の有無とPCR 検査の陽性陰性の関係の表です。

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色々な感染率(事前確率)で計算してシミュレーションしてみます。

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以上の結果よりその集団の感染率が上がれば

  偽陰性確率が上がり

  偽陽性確率は下がります

逆に感染率が下がれば

  偽陰性確率は下がり

  偽陽性確率は上がります

つまりPCR 検査の結果の解釈はその集団の感染率によって変わってくるということ。 又、陽性的中率と陰性的中率の関係は下の図の通りです。   

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但し P C R 検査を受ける方からすると一回一回の検査は独立事象で被験者の感染の有無・PCR検査の感度・特異度に応じてのみ結果が出ますが集団として考えた時、集団全体の感染率に応じてその結果の意味合いが、大きく変わってくるということだと思います。

感染率10%ぐらいが最適のように見えます。

見えにくくて申し訳ありませんが、世界のPCR検査数の比較です。(講演で細川先生が提示されていました)

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この表で右端は米国で膨大な数の P C R 検査をやっていて陽性率も低いので感染者はほぼ捕捉されていると考えられます。 真ん中の新宿区は7月時点で他国に比べると人口10万人当たりの P C R 検査数が多く、陽性率も高いので、まだ捕捉されていない陽性者が数多くいると思われます。 東京全体で見ると、ヨーロッパのいくつかの国々よりは多く、陽性率も低いため概ね十分な数の検査が行われていたと推測されます。その隣の大阪では数は少ないですが陽性率は高くなく、その上のフランスは陽性率も高くまだ捕捉されていない感染者が数多くいると思われます。

よって世界に比べ日本の P C R 検査数がすごく少なくて町中に感染者がうようよいるという状況ではなさそうです。

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人口当たりの検査数は外国と比べて少ないですが、感染者当たり、死亡者当たりのPCR数は決して少なくありません。

日本はできるだけ偽陰性・偽陽性を出さないよう、できるだけ的中率を上げるように、クラスターや医師が必要と考えたときなどに限定して検査をしていた結果だと思います。

このことに関しては間違いとは言えないでしょう。

自分がある感染者の濃厚接触者であって結果が陽性であれば偽陽性確率は低いので、ほぼ真の陽性。陰性であっても偽陰性確率が高いので慎重に経過を見ていく必要があるということになります。

逆に推定感染率が低い集団、つまりなんでもかんでも全員に P C R 検査をやるとすると偽陽性が真の陽性者数より多くなり、検査で陽性と出た時の信頼度が著しく低下します。つまり濡れ衣を着せられた人がたくさん隔離されてしまうということになります。人権上も問題があるし、まとまった人数に対して隔離施設や病院のベッドが大量の偽陽性者のために用意できるはずがありません。

もし今後感染率が上がっていくようなら偽陽性確率は下がっていきますので、検査で陽性と出た時の信頼度は上がりますし、逆に偽陰性確率も上がっていきますので何度も積極的に P C R 検査を実施して真の陽性ではないか確かめていくことが必要になります。

「日本の P C R 検査数は少ないか?」という疑問に対しての答えは、「人口当たりの検査数は確かに少ないが、非常に効率よく行われている。」ということが言えると思います。

今後もクラスター発生時や感染率が高いと思われる業種・業界にたいしては、できるだけ広範に P C R 検査を実施していく必要があると考えます。

次回はほかの疑問に対しての答えを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

お忙しい中お読みいただきまして、誠にありがとうございました。

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