ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

フレイル

 

 

  あなたはこれでなやんでいませんか?

 

 厚労省のホームページでは20歳以上の国民の7割が悩み事を持っていてその内容としては、

 1位 老後の不安

 2位 自分の健康

 3位 家族の健康

であり、女性、特に30代~40代の約8割が悩みやストレスが多いと答えています。

40代以上の男女に聞くと老後の不安に関しては7割以上が健康上の問題でした。

 

フレイルとは、何でしょう?

 

 我々がフレイルと聞くと、まずフレイルチェスト(動揺胸壁)といって1つの肋骨が複数個所で骨折を起こし、呼吸状態が悪化する病態を想起します。

 本日主題のフレイルとは英語のFrailtyが語源で虚弱や老衰などを意味する和製英語で2014年日本老年医学会が提唱しました。

 

あなたも、フレイルではありませんか?

 

 1. 6か月で2~3キログラム以上の体重減少がある

   2.   わけもなく疲れたような感じがする            

   3.日頃運動、体操、などはしていない

   4.   握力は、男性26キログラム、女性18キログラム以下である

    5.   1秒当たり1m以下しか歩けない    [Friedら]

3項目以上当てはまればあなたは、フレイルです。

 

どんな風にフレイルになっていくの?

 

 イメージとしては、健康な人と介護が必要な人との中間がフレイルです。

実際に外来で多くの患者さんを拝見していると

 1)歩く機能が落ちてゆく: つまり、普通にスタスタ歩いてこられた方が、いつしかT字杖になりそのうちに老人カー(押し車)になり、さらには車いすか、来院不能になっていかれます。

 2)認知症が出現してくる: ある日突然物忘れをたくさんしだしたり、薬の管理ができなくなったり、受信日を頻繁に忘れたりするようになります。

 3)独居となって変わっていく: 今までご主人や奥さんと一緒に住んでいたのに、病気でどちらか亡くなったあとお気の毒に一人住まいとなり、急に隣近所付き合いが無くなり、一人で食事をとったりして急激に体調が変わっていかれる方がいます。身寄りが全くないわけではなく、それぞれのお子さんたちのやむおえない事情で親が独居を強いられるわけです。

 4)ある患者さんは、中年の一家の大黒柱たる息子さんが、突然くも膜下出血で倒れてから、息子さんご夫婦、お孫さんたちをおひとりで面倒をみて、みるみるうちに痩せていって、自宅内で転倒し骨折し入院。

 5)高齢者の方は腎臓の機能が低下していることが多く、薬の多くは腎臓から体外に排泄されるため、薬の量を多く処方すると転倒しやすくなったり、腎臓や肝臓を傷害し、結果フレイルに陥りやすくなります。 

 

フレイルにならないようにするには?

 

 結論としては 、

1)運動

2)栄養

3)社会参加                                                                                             

 

 この3つです。

1)何もしないと筋肉は衰え、膝や腰が痛くなったり、転倒骨折しやしくなりそれを防ぐために積極的に散歩をして有酸素運動したり、家庭内で片脚起立運動やスクワットをやってください。

 

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2)高齢になると栄養を摂取する効率が悪くなります。ですから筋肉のもととなるたんぱく質を若い人以上に摂る必要があります。(但し、腎臓病などの人は主治医と相談してください。)魚、大豆製品、野菜、果物を多くとる日本型の食事パターンが良いようです。

3)我々は、介護サービスを受けている患者さんで外来のリハビリもやっていただいている方には、必ず定期的に地域活動などの社会参加をすすめるように義務つ”けられています。

人間は社会的な動物ですから、ほかの人と触れ合い、人と繋がりを保つことで人間の生理機能が活性化するのだろうと思います。

 

ぽっくり死にたい!

 

 一生若い体でいれる人は、誰一人いません。

「年をとって寝たきりにだけは、絶対なりたくない。」と患者さんは皆さん言うし

「死ぬときは、ぽっくり行きたい。」とほぼすべての人が私に言います。

健康寿命(健康的に生活できる期間)は男性71歳、女性74歳であり、この健康寿命を延ばすことが何より大切であり

「できるだけ健康で長生きするのはいいでしょう?」と患者さんに話しかけると、概ね賛成してくれます。

 

実践することが一番大切です

 

 国民の悩み事の大部分を占める、高齢になってからの健康不安。

この中で多くを占めるフレイルに関し、自分なりに考えてみました。

フレイルを少しでも避けるためには、前述したことを実践するしかありません。

できれば、お宅の近くの歩いて通えるところにかかりつけ医を持ってください。そしてその先生に色々と相談してみてください。

患者さんは外来で実にたくさんのことを話して行ってくださいます。

逆に言うとそれだけ話す人がいない孤独な環境に置かれているということだと思います。私も時間の許す限りお話に付き合おうと思っております。

 

 

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